独立に興味をお持ちの公認会計士の方は多いのではないでしょうか。
近年、SNSを通じて情報発信する会計士が増えたことで、独立がより身近に感じられるようになり、独立志向の方が増えているようです。
転職相談を受ける中で、「将来独立をしたいと思っているが、税務の経験は必要か?」「将来独立を目指すにあたって、どのような経験を積んでおくと良いか?」といった質問をいただくこともあります。
このページでは、独立を考えている公認会計士向けに、どのような転職先が考えられるのかを詳しく解説します。
なお、Bridge Agentでは、公認会計士の転職支援はもちろんのこと、独立会計士向けに案件の紹介や業務に役立つセミナーなども行っています。
将来の独立に向けた情報収集の際に、お役に立てると思いますので、ぜひご相談ください。
目次
公認会計士が独立した際に行う業務から転職先を考えてみる
公認会計士が独立後に携わる主な業務領域は、以下の2つです。
- 財務・会計コンサルティング業務
・IPO
・M&A
・決算支援
・内部統制支援 など
2. 税務業務
公認会計士が独立する場合、公認会計士資格を生かしたコンサルティング業務と、税理士登録をして税務業務を行う2つが主なものとなります。主流は税務ですが、近年ではIPOやM&Aの需要の高まりから、コンサルティング業務中心に独立するケースも増えています。
それぞれの業務の特徴やメリット・デメリットを見ていきましょう。
税務
公認会計士が独立した際のメイン業務として、税務を行う方が多い傾向にあります。顧問先を増やすことでストック型の売上が確保でき、事務所経営が安定するためです。また、税務業務の特性上、個人のお客様から法人のお客様まで幅広い層にアプローチできるため、顧問先が獲得しやすい傾向にあります。
独立当初の案件としては、個人事業主や中小企業の税務、顧問先企業の経営者個人の確定申告などが多くなる傾向にあります。法人税務だけでなく、個人の所得税や相続・事業承継が絡んでくることもあり、慣れていないと苦戦することもあるでしょう。
また、実務面の課題だけでなく、中小企業の経営者は少し個性的な方も多いので、コミュニケーションで苦労することも少なくありません。
公認会計士の場合、大手企業としか仕事をしたことがない方も多いため、独立を目指すのであれば、中小企業を相手にする経験を積んでおくといいでしょう。
コンサルティング業務
一方で、会計・財務に関するコンサルティングを必要とする企業は、上場企業など比較的規模の大きな事業者である場合が多く、案件獲得のハードルは税務と比較すると高くなります。
公認会計士であっても、個人で大手企業から案件を獲得するのは難しく、クライアントを開拓するのに時間がかかります。
単価は高いものの、スポットでの依頼が多く、継続性に欠けるため、安定しにくいというデメリットもあります。そのため、独立当初は税務中心に業務をこなしているケースが多いようです。
ただし、近年の傾向としては、M&Aにおける財務デューデリジェンスやバリュエーション、IPOに伴う内部統制構築支援など、M&AとIPOに関連する業務の需要が非常に高まっており、場合によっては、個人事務所でもこれらの案件が取れるケースが増えています。
小規模なM&Aでは、個人でFAサービスを行っている事務所に声が掛かることも増えているようです。加えて、上場企業の開示支援や決算早期化など、経理支援に関する需要も高い印象です。
経理や会計ポジションの人員が不足している企業が多いため、営業力や人脈があれば、上場企業を直接クライアントにすることも可能です。
一般的には、こうしたコンサルティング業務の案件を個人事務所が直接獲得するのは難易度が高いとされていますが、近年は対応できる人員が不足しているため、案件は昔よりも獲得しやすくなっている印象です。
なお、弊社では、独立会計士向けに、これらのコンサルティング案件の案内も行っています。独立し、事務所経営が軌道に乗るまでの間、うまく活用していただくことも可能です。
独立を踏まえた公認会計士の転職先
上記を踏まえ、独立を視野に入れている公認会計士の転職先候補は以下のようなところが考えられます。
- 会計事務所・税理士法人
- FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)などの財務会計系のコンサルティングファーム
- 事業会社
- 中小監査法人
会計事務所・税理士法人
独立して自分の事務所を持つのであれば、会計事務所で経験を積んでおくことは有益だと考えられます。税務未経験で独立すると、実務経験の不足から自信が持てず、その結果、営業活動にも自信が欠け、良い顧問先を獲得するのが難しくなることがあります。
実務レベルだけでなく、自信の有無が獲得できる顧問先の質に影響することもあるため、税務を行う上で、ある程度自信をつけておきたいのであれば、経験を積むメリットは非常に大きいと言えます。
独立することだけを考えるのであれば、最も役立つ経験が得られる可能性が高い転職先と言っても過言ではありません。
顧問先の獲得方法を学べる
事務所の経営を安定させるには、顧問先の獲得ルートを理解しておくこととも重要です。どこからどのように新しい顧問先を獲得しているかを知っておきましょう。
最近は、WebやSNS、YouTubeなどの活用によって拡大する会計事務所も増えています。これらのノウハウを吸収することも悪くありませんが、一方で、安定した会計事務所は紹介により拡大しているところが少なくありません。
紹介と言っても、金融機関からの紹介、顧問先企業からの紹介などルートはさまざまです。どのようなところへ入り込み、どのように紹介を得ているのか、これらのノウハウ・ルートを知ることが肝要です。
良い仕事を提供していれば、紹介がもらえる場合もありますが、基本的には積極的なアプローチが必要です。したがって、良い顧問先を獲得していく術が学べる可能性があるのも、魅力の1つと言えます。
事務所経営を学ぶことができる
拡大志向があるのであれば、個人事務所だけではなく、事務所の経営・運営についても学んでおくと良いでしょう。
顧問先の獲得が順調でも、所員のマネジメントがうまくいかず、事務所が崩壊するケースは少なからず存在しています。人材の採用はもちろんですが、定着が課題となる事務所は多くなっています。
また、事務所経営・運営においては、IT化やデジタル化対応に迫られることが多いため、どのような運営を行っているのかを把握しておくことで、将来の展望が見えやすくなります。
事務所運営に関する学びのメリットは大きいと言えるでしょう。
税務+αの実務経験
実務においても、税務に加えて、FAS業務や決算支援など、幅広い案件に携われる事務所もあります。事務所によるところはありますが、幅広く関与できる場合にあっては、独立にあたって非常に有益なものとなるでしょう。
転職にあたっての事務所選びは難しい
転職にあたって、会計事務所選びは非常に難しいかと思います。独立してどういった顧問先を獲得したいかや提供したいサービスによって、どのような会計事務所が合うかは変わってきます。また、都合よく、自身にベストな会計事務所が求人募集しているとも限りません。
絶対的な指針ではありませんが、一般論としては、公認会計士が所長の会計事務所は、どちらかというと拡大志向の事務所が多く、人を採用し、部下に仕事を任せる文化を作っていく傾向にあるように感じますので、事務所経営という点では勉強になることは多いと感じます。
また、実務面においても、公認会計士が独立してやっていく観点での案件の獲得などは参考になるでしょう。独立を見据えた転職先選びにお悩みがあれば、気軽にご相談いただければと思います。
FAS
M&Aの需要が高い昨今、FASでの経験は、独立後にも大いに役立ちます。一般的に、FASというとBIG4FASを想起する方が多いかもしれませんが、独立ということを考えるのであれば、クライアントと近い距離で関われる中小の独立系FASの方が、経験や得られる人脈という点でマッチする可能性が高いかもしれません。
一概にどちらが良いと断定できるものではないのですが、ここでは独立系FASへ転職するという想定で記載します。
営業活動からクライアント対応まで、全体を俯瞰した業務が経験できる
独立系FASで働くメリットは、仕事の全体像を把握できる可能性が高いということです。これは、FAS業務(財務デューデリジェンス、バリュエーション、FA、PMIなど)に横断的に関わるだけでなく、クライアントの獲得から営業的な業務、案件化したあとのクライアントマネジメントまで含みます。
個々のファームによって異なりますが、クライアントとの円滑なコミュニケーションを通じて業務を進める経験は、独立するにあたって役立つと言えるでしょう。若いうちから多様な経験ができることも魅力の1つです。
個人に紐付いた人脈の形成ができる
独立系FASで働く大きなメリットの一つは、個人的な人脈を作りやすいことです。さまざまなクライアントと直接関わる機会が多く、これによりクライアントやその周辺の方々との信頼関係・人脈が築きやすくなります。こうした人脈は、独立後に重要なリソースとなり、顧問先の獲得や事業の拡大に役立つことがあります。
幅広い会計業務に携わるチャンスも
会計事務所同様、FAS業務に付随して、IPO支援や決算・開示支援、IFRS対応など、会計に関するアドバイザリー業務の経験ができる場合があります。
この分野の案件は増加傾向にあるため、幅広い経験を積むメリットは大きいでしょう。
事業会社
事業会社と言ってもベンチャー企業から上場企業までさまざまな規模がありますが、いずれにおいても独立後に役立つ経験を得ることができます。
上場企業やその子会社の決算支援の需要の高まり
経理支援業務の需要は、昨今大きく高まっています。リソースが不足している事業会社は増加しており、開示・決算支援を中心に、経理支援業務の需要は高くなっています。
公認会計士として、上場企業内部で具体的に実務を行っていた経験が役に立つ場面は非常に多くなっています。
IPO支援を始めとしたベンチャー企業の経営管理支援の需要の高さ
IPO支援の需要も高まっています。経理を含めた管理部門体制や業務フローの構築など、上場に向けて専門家が必要とされる仕事が増加しています。
IPO準備が本格化する段階までは、CFOの役割を外注する企業も多いため、ベンチャー企業内部で組織を作り上げた経験がある方は、独立後も需要は高くなっています。そのため、ベンチャー企業への転職もおすすめできる選択肢と考えられます。
独立の熱が下がっても、事業会社であればそのままキャリアを形成しやすい
当初は独立を目指していたが、年齢を重ねるにつれて、その意欲が薄れていくケースもあります。その場合、会計事務所や中小FASで働き続けることが適切ではなくなることも多くなっています。
一方で、事業会社であれば、そのままキャリアを継続しやすいというメリットがあります。事業会社での経験は、独立する際にも役立つため、独立への意欲がそれほど高くない場合には、事業会社の方が良い選択肢となることもあります。
中小監査法人
中小監査法人も独立に役立つ経験が得られる場合があります。
副業を認められるケースが多い
中小監査法人では、副業が認められるケースが多くなっています。これにより、監査法人に所属しながらスポットでさまざまな案件に関与し、徐々に慣れていくことも可能な場合があるでしょう。
また、自分の会計事務所を持ちながら働ける監査法人もあります。そうした監査法人では、同僚・先輩も同じように半独立状態の方が多いため、案件を手伝ったり、情報共有を行ったりできる可能性があります。
中小監査法人は比較的ワークライフバランスが取りやすい傾向にあるため、独立に向けていろいろと試してみたい場合にはマッチすることがあります。そのため、意外と中小監査法人も狙い目だと考えます。
ただ、中小監査法人と一口に言ってもさまざまありますので、求人選びが重要です。転職先選びにあたって悩むことがあれば、気軽にご相談いただければと思います。
独立して成功している人のバックボーンはさまざま。絶対的な正解はない
独立に向けてどのような転職先が考えられるのかを見てきましたが、実際のところ絶対的な正解はありません。
一般的には、独立後に税務を行う方が多いため、会計事務所への転職が有効であると考えられます。しかし、独立後に税務を一切行わない方もいらっしゃいます。また、賛否はありますが、税務未経験で独立し、税務案件をこなして事務所を拡大する公認会計士も存在します。
経験を積むことは重要ですが、独立してうまくやっていける方は、自分のレベルに合わせて戦略的に案件を獲得しているように思います。
「なぜ独立したいのか?」という動機の部分からどのような案件を獲得すべきなのかを考え、それに即した経験を積んでいくのも良いでしょう。
Bridge Agentではそのような志向の整理からキャリア支援を行っています。
独立を含め、キャリアに関してお悩みがあればご相談ください。
監査経験だけで独立開業できる?チャレンジがしやすい環境は整っている
監査経験のみで独立し、成功している公認会計士も多数いらっしゃいます。
独立して成功できるかどうかは、自分の状況にあった適切なお客様を効率的に獲得できるかどうかにかかっているため、極端なことを言うと、実務スキルが低くてもマーケティングがうまければ、大きな売上を立てることは可能です。良いか悪いかは別として、公認会計士に限らず、実務レベルはそれほど高くなくても、大きな組織を作って成功している方は多数います。
また、最近では監査法人の非常勤案件を代表例に、事務所経営が軌道に乗るまでの間、下請けとして案件をこなして売上を確保することが比較的容易な状況です。
ひと昔前と比べると、売上を立てる手段は数多くあり、相談できる先も増えています。独立して目の前の案件をこなしていくことで、高い実務力を身につけていく方も多くいます。
このような状況から、独立しても売上を立てられずに困窮するリスクは極めて低いと考えられます。チャレンジしやすい環境が整っていると言えるでしょう。また、独立してもうまくいかなければ、スキルを磨き直すための転職もそこまで難しくありません。
独立するかどうか迷っている方のキャリア相談も行っています
Bridge Agentには、これまで数多くの公認会計士の転職支援を行ってきた経験豊富なコンサルタントが在籍しており、公認会計士のキャリアに精通しています。
また、独立会計士向けの案件紹介も行っているため、独立を視野に入れている場合のキャリアアドバイスも得意としています。
独立を決めている方も、独立に興味があるが迷っている方も、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職(現:dodaX)』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。