「経理は転職しやすい?」
「会計士事務所から事業会社へ転職は可能?」
「経理のキャリアはどんなものがある?」
経理は、会社経営に不可欠なお金の流れを記録・管理する役割などを担い、常に求められる存在です。つまり、経理人材はさまざまな企業で必要とされ、転職しやすい職種と言えます。
経理の職に就いている方や、経理の仕事に興味がある方々がこの記事をお読みになっていると思いますが、キャリアアップや新しい環境に挑戦したいと考える方も多いのではないでしょうか?
本記事では、経理のハイクラス人材を多数転職支援してきたBridge Agentのコンサルタント・大島 直樹氏に、経理人材の転職に関するインタビューを行いました。
経理での転職を検討されている方にとって有益な内容となっておりますので、転職成功のための参考にしていただければ幸いです。
Bridge Agent コンサルタント
大島 直樹
公認会計士・税理士・管理部門に特化した人材紹介会社にて監査法人・税理士法人・ファンド・コンサルティングファーム・事業会社の管理部門へ多くの転職支援を行ってきました。Bridge Agentでは、 IPOベンチャー企業の求人を中心にご支援させていただいております。
保有資格:国家資格 キャリアコンサルタント
まず相談してみたいという方は、Bridge Agentまでお気軽にご連絡ください。
目次
経理は常に売り手市場!会社規模や業界に関わらずニーズの高い職種
経理人材が特に求められている業界
経理は会社規模や業界に関わらず非常にニーズの高い職種です。
特定の業界が経理人材を特に求めているというよりも、多くの企業が経理人材を常に必要としており、経理の専門知識を生かせる職場は豊富にあります。
強いて言うならば、メーカー企業では慢性的に経理人材が不足している傾向にあります。
その理由としては、メーカー独特の「原価計算の経験」が必要なケースが多いためです。
日商簿記だと2級レベルの工業簿記知識が必要となり、原価計算に関しては簿記1級レベルの知識が求められます。
ただ、メーカー企業の経理でも未経験可能な求人もあります。
原価計算の経験を積み、転職先の選択肢を広げたいと考えている方は、私たちのようなコンサルタントに一度ご相談いただくことをオススメします
経理は通年で求人している
経理の求人は、1年を通して常に各社から出ています。
転職相談が活発になる時期としては、決算時期を越えた6月以降やボーナスを受け取った後(7月、12月頃)に相談が多くなる傾向があります。
経理の代表的なキャリアプラン
経理の代表的なキャリアプランは、会計事務所や中小企業で経験を積んで大企業へ転職する、CFO(最高財務責任者)や経営企画などの役職を目指す、公認会計士や税理士資格を取得し、独立して開業するなどが考えられます。
キャリアプランに迷っている方にオススメなのは、まずは会計事務所で税務などを学び、経験を積んだ後に事業会社へ転職してキャリアをステップアップさせることです。
しかし、会計事務所から事業会社への転職は比較的少ないのが実情です。求職者側も企業側も、その可能性に気づいていないのかもしれません。
Bridge Agentのような人材支援サービスに登録することで、コンサルタントが転職希望者と企業の間に立ち、その可能性を最大限に引き出すことができます。
転職を希望する方から、「会計事務所での経験を生かしてステップアップできる転職先はありませんか?」という相談が寄せられた際に、「事業会社の経理としてステップアップを目指してみませんか?」など、その方の経歴や志向にあった提案が可能です。
同様に企業側にも対象候補者の範囲を広げる提案ができます。
弊社では、常に企業の経営者や採用担当者と情報交換を行っていますので、転職したい方々に対して応募企業の具体的な状況などをしっかりと伝えことが可能です。
経理の代表的なキャリアパス
経理のキャリアパスは、経験やスキルに応じて異なります。
代表的なスキルの1つとして、会計の日次処理から月次処理、そして年次決算などがあります。
年次決算までできるようになると、さまざまな企業で活躍できるスキルが身についたと言えます。
さらに、年次決算を含む経理の業務全般をこなせるようになると、管理部長やCFOを目指すことも可能です。
大手上場企業のキャリアパス
大手上場企業の経理財務部に配属されると、通常は定年まで長期間働くイメージがあります。
会計処理を担当しながら、30歳前後に昇進し、マネジメント業務に携わることが一般的です。
CFOを目指すことも可能ですが、上位の管理職ポジションが詰まっていたり、そもそもポジションの数が少ないことから、望むポジションに就くことが難しいことがあります。ただ、グループ子会社のCFOなども目指すことは可能だと思います。
IPO準備企業のキャリアパス
IPO(新規上場)を目指す企業では、通常の経理業務に加えて監査法人対応や主幹事証券会社との対応が求められます。こうした経験は、他では得られません。
Bridge Agentでは、IPO準備企業の求人が多くありますので、ご興味のある方はぜひ一度ご相談ください。
外資系企業のキャリアパス
外資系企業では、コントローラーとして日本を含むアジアやヨーロッパ、オセアニアなどの国の統括ポジションへステップアップを目指すか、英語を始めとする語学力とグローバルな会計基準である「IFRS」や米国の会計原則である「US-GAAP」などの経験を積んでポジションアップや給与アップを目指すことも可能です。
経理職の転職を成功させるために知っておきたいポイント
企業に求められている経理人材を理解しておく
経理においては、数字に向き合うだけでなく、「数字をどう使うか」を経営陣へ明確に伝え、会社の意思決定に関わろうとするコミュニケーション能力が求められます。
さらに、部門マネジメントとして、専門的で職人気質な方が多い経理組織をまとめ上げる人間力は、多くの企業から必要とされています。
転職で実現したいことを明確にする
また、転職によって「何を変えたいのか」「何を改善したいのか」を明確にすることが大切です。
例えば、以下のような点です。
- 年収を上げたい
- 業務の幅を広げたい
- 業務の専門性を高めたい
- 働き方を変えたい
As-Is(現状)To-Be(未来)で自分のキャリアと考え方を整理することが必要です。
キャリアの幅を広げるためにベンチャー企業も検討する
大手企業への転職を希望する経理の方も多いのですが、ベンチャー企業も転職先の候補として検討されることをオススメします。
大手企業での経理は、役割分担が明確で役職者が年次決算を締めているケースもあり一定の年数が経たないと日常の処理や月次決算のみの経験しか積めません。
一方で、ベンチャー企業では、大手企業の役職者が着手するような業務や、関連部署の仕事まで携わることが可能です。
大手企業では得られない経験が積めますが、その一方で忙しさも増すかもしれません。しかし、若いうちから幅広い経験が得られることは大きなメリットと言えます。
経理として高年収を狙えるスキルを知る
年次決算業務ができる方の相場年収は、500万円~600万円程度です。
それ以上の高年収を目指すためには、年次決算の業務経験に加えて、マネジメントや英語力などの他、海外子会社管理、IFRS対応、IPO準備経験などが挙げられます。
経理で年収800万円以上もらえるケース
先述したスキルの組み合わせ、経理以外の管理部門(人事、総務、労務など)についての経験や知識がある方、組織体制の構築に幅広く関与できる方は、より高い年収とマネジメント層へのキャリアアップを目指すことができます。
経理のキャリアアップに必要なのは業務の幅と専門性
「スペシャリスト」か「ゼネラリスト」を目指す
経理のキャリアアップにおいては、ある分野に特化して突き抜けるスペシャリスト、幅広い知識・経験を持つ万能なゼネラリストのどちらかを目指すかで進むべき道が変わってきます。
スペシャリストを目指すのであれば、英語力や上場企業での開示業務や連結決算業務など、専門性の高い経験を積むことが重要です。
一方、ゼネラリストを目指すのであれば、経理を軸とした管理部門全体のマネジメント能力を高めながら、管理会計や予実管理、経営企画、FP&Aなどの経営に近い業務にも挑戦することが求められます。
例えば、ベンチャー企業の経理では、1人で多岐にわたる業務に対応できる柔軟性が求められます。そのため、ゼネラリストとしての能力を高めることで、ベンチャー企業での経理として活躍できる可能性が高くなります。
経理の求人例
経理の求人例として、以下のようなポジションが考えられます。
スタッフレベル 想定年収:約500万円
- 日次~月次の決算業務
- 経理日次、月次、年次決算業務(年次決算は内製化)
- 金券管理
- 各事業部との連携
- 業務フロー構築
- 電話対応
- その他、管理本部にまつわる業務
マネジャーレベル 想定年収:約500~800万円
- 単体決算および連結決算業務(年次/四半期/月次)
- 開示業務(有価証券報告書、決算短信、計算書類など)
- 適時開示業務(決定事実、発生事実に関する書類作成など)
- 予算策定、予算実績差異分析
- 監査法人対応(会計監査論点に関する折衝)
- メンバーマネジメント
シニアマネージャーレベル 想定年収:約800~1200万
- 上記に加えてファイナンス(攻め)もしくはガバナンス(守り)のどちらかができる
- IPO準備経験
- 管理部長レベルの方
- 「株主資本を増やす(エクイティファイナンス)」「銀行借り入れや社債発行する(デットファイナンス)」などの資金調達ができる
役員レベル 想定年収:約1200~2000万円
- 管理部長やCFOなどファイナンス(攻め)とガバナンス(守り)の両方において実績がある
- IPO達成経験があり、SO(ストックオプション)の設計ができる
Bridge Agentでは、ハイクラス、エグゼクティブレベルの求人を中心にご紹介しておりますので、ご興味があれば一度ご相談ください。
経理職の面接で注意すべきポイント
入社前に一緒に働く人との相性を見極める
重要なのに意外と見落としがちなのが、「誰と働くか」という視点です。一緒に働く人との相性が、仕事への取り組み方に影響を与えることがあります。なので、面接の中で相手との相性を注意深く見極めることが肝心です。
内定まで進んだ場合、一緒に働く経営陣や上司・同僚などの関係者と再度接点を持ち、自分で「この会社でぜひ仕事をしたい」と納得することが大切です。
面接が進む中で、クライアントへの追加質問やカジュアルな面談の設定を希望する場合は、担当のコンサルタントに相談すれば対応してもらえます。
企業も自社との相性を重視している
企業も自社との相性を重視しています。会社のカルチャーにフィットするかという視点で、「なぜ転職を考えているのか?」「自社で何を達成したいのか?」「長期的に働いて活躍できるか?」などの質問を通じて、転職希望者と自社との相性を判断しています。
基本を押さえておく
大前提として、企業側が候補者を見ているところは「身だしなみが整っているか」「個性はあるが自社の文化に適合できるか」「真摯な対応ができるか」などです。
これらは経理に限らず、あらゆる職種において、当たり前のことですが、気をつけたいポイントです。
経理転職支援の成功事例
Uターンとキャリアアップの両方を実現
某企業の子会社、A社における経理責任者ポジションの転職支援事例をご紹介します。
A社
企業の特徴:C県にある大手インフラ企業の子会社
ポジション:経理責任者
B氏
年齢:40代
経験:会計事務所、監査法人、事業会社での経理責任者
転職理由:今の会社で経験できることはすべて吸収したため、地元のC県に戻りたいと考えていた。しかし、希望する職種や条件に合致する求人がなく、転職を諦めるか悩んでいた。
A社の親会社は、何十もの子会社を抱える大手企業です。A社がIPOを目指すことから、話が始まりました。
A社側では、決算の早期化や監査法人からの指摘事項の解決が求められていました。
しかし、親会社側はIPO準備などに追われており、この課題に対処する余裕がありませんでした。
このような状況下で、経理をまとめる人材のニーズが生まれましたが、適切な人材の採用に苦戦していました。
そこでまずは、企業の経営陣と打ち合わせを行い、必要な人材像を明確にしました。
その結果、「現在の監査報告書の理解や対応ができ、経理メンバーの教育も可能な人材」が求められることが明らかになり、会計事務所経験や監査法人経験、事業会社経験があるB氏をご紹介しました。
B氏のキャリア相談をさせていただいた際、経験の強みや今後の展望などを深くヒアリングしていく中で、最初は関東圏で求人を探していたものの、地元のC県に戻りたいという「転職でかなえたい」ことが明確化しました。
B氏の人柄や経験であればA社での難易度が高い要件にも対応できることと希望が合致していることから、案件をご紹介しました。
条件だけでなく、カジュアル面談の設定や対象企業の現状を詳細に伝え、B氏に本案件の魅力を理解し納得いただくことで、入社を決めていただきました。
転職の軸を変え、キャリアの可能性を広げながら年収もアップ
転職でキャリアの可能性を広げたD氏の事例もお伝えします。
D氏はもともと税理士を目指して会計事務所で働いていましたが、税理士の道を諦め、今後のキャリアにお悩みでした。
そこで、事業会社へ転職すると会計事務所では実現できない働き方や給与アップの可能性があることをお伝えしました。
一方で、求人企業側には会計事務所から事業会社に転職することで活躍できる方が多いことをアピールしました。
こういった提案で候補者と企業側の双方で可能性が広がり、転職が成功することもあります。
実は、会計事務所で働いている方は業界を変えると年収がアップする可能性があります。
会計事務所から事業会社への転職で年収を100万円上がる事例は少なくありません。
会計事務所の経験しかない候補者の方々は、「私で大丈夫だろうか?」「組織勤めなんてできるのかな……」と、自分の市場価値を低く評価している方が意外と多い印象です。
転職エージェントに相談すると、自分の可能性が広がることがあります。悩んだら一度相談してみてください。
経理人材の需要は今後ますます高まる
IPO準備を進める企業が増加していることから、経理人材の需要は間違いなく増えると思います。景気が悪化しても、企業が存続する限り、経理は必要な職種です。
また、これまでの経理人材が引退で労働人口から抜けていくと、次世代の経理人材が座れる席が空くことで、経理の転職市場の競争率も下がります。
経理経験は一生涯役立つスキルです。年齢・性別関係なく活躍できるので経理のキャリアは安定しています。
未経験でも経理への転職は可能
未経験者でも経理への転職は可能です。経理経験がない場合は、簿記二級や税理士科目合格、公認会計士受験勉強経験などで知識を証明すれば、転職の可能性を高めることができます。
また、コミュニケーション能力を重視する企業であれば、営業や販売などバックグラウンドがサービス業でも経理に転職できるケースもあります。派遣や契約社員として経理事務職を経験し、会計の実務経験を積んだ後、正社員として転職するというパターンも考えられます。
経理の転職を希望する方々へのアドバイス
まずは自己分析を行い、自身の能力や希望を明確にすることが重要です。
自己分析や経験の棚卸しは1人でもできますが、相談相手がいると自分が思ってもいなかった新たな視点やキャリアが見えてくることがあります。
例えば、私のように経理の転職事例をたくさん知っている人間と壁打ちをした方がキャリアの幅が広がり、効率的です。コミュニケーションが苦手でも、Bridge Agentは経理人材支援のプロフェッショナルがサポートさせていただきますので、安心してご相談ください。
転職を即決する必要はありません。将来のキャリア形成を考え、数年後の転職やステップアップに向けて、身につけるべきスキルなど中長期的な視点で提案します。