ブリッジコンサルティンググループ株式会社は、日本公認会計士協会 会員有志主催研修会と共催で、女性会計士向け転職セミナー「現役女性監査役が語る~監査役のリアル~」を2023年12月12日(火)に開催しました。
講師に、ブリッジコンサルティンググループ株式会社 社外取締役(監査等委員)山田 琴江氏、株式会社リアルゲイト常勤監査役 木内 有子氏を迎え、監査役として経験を積まれてきた経験者の2人から、就任の経緯やこれから監査役として業務を進めていくうえでの心構えなど、自身の経験に基づいてお話しいただきました。
目次
セミナー講師プロフィール
公認会計士・税理士・FP ブリッジコンサルティンググループ株式会社 社外取締役(監査等委員)
山田 琴江
2005年公認会計士旧二次試験合格、2006年有限責任監査法人トーマツ入所。2015年Fringe81株式会社(現Unipos株式会社)常勤監査役就任、2019年ブリッジコンサルティンググループ株式会社監査役就任。監査役歴8年目。
公認会計士 株式会社リアルゲイト 常勤監査役
木内有子
1998年朝日監査法人(現あずさ監査法人)入所、主に上場企業の監査に従事。
2003年ダイコロ株式会社非常勤監査役就任。 監査法人退所後は子育て中心の生活を送る。
2019年9月株式会社リアルゲイト常勤監査役に就任し、2023年6月グロース市場上場を経験する。
公認会計士としてのキャリア
出身はあずさ監査法人の大阪事務所で8年ほど所属していましたが、2度の産休と育休を取得していますので実質6年程のキャリアです。監査法人を退職した後、非上場のダイコロ株式会社で会計監査限定の非常勤監査役をほそぼそとやっていて、監査法人退職後はほぼ育児に専念していたという超ゆるキャリです。プライベートでは3児の母です。
そんな超ゆるキャリの私がベンチャー企業にジョインして上場まで経験したお話をさせていただければと思います。
大学卒業後にすぐに有限責任監査法人トーマツに入所し、国内監査業務を9年半行ってきました。2回の出産、育休を経て、「会社の成長に寄与したい」という思いから、現Unipos株式会社の常勤監査役になりました。就任して1年半後の2017年6月に東証マザーズに上場しました。
その後、ブリッジコンサルティンググループ株式会社の社外監査役(※)に就任し、昨年度、TOKYO PRO Market(TPM)上場、今年グロース上場を経験しました。また、他にも非上場会社で非常勤監査役を務めています。
監査役も8年目となりましたが、ライフステージの変化など、どんな事情があっても1人1人が幸せに働ける場所を作りたいと思い、役員と監査役のキャリアを継続しています。プライベートでは中学校1年生と小学校3年生の子供がいます。
※組織変更により、その後取締役(監査等委員)
監査役就任の経緯
子ども達が大きくなってきて、もう少し働こうかなと思ったときに、会計監査しかやったことがなかったので、業務監査もできる常勤監査役のポジションに興味を持ちました。
どういうことをするのかさっぱりわからなかったのですが、2019年の5月頃に山田(琴江)さんのリアルなお話を聞いたり、監査役に就任している友人の話を聞いて、常勤監査役を目指そうと思い始めました。
大体、秋くらいから案件が増えると聞いていたので、職務経歴書の作成を進めていたのですが、8月頃に知り合いから「常勤監査役のポジションを探している」と聞き、渡りに船で飛び込んで9月に就任しました。
良い会社だったからよかったのですが、これから監査役になろうと考えている方は、入る前にまず会社の方とコミュニケーションを取ることが大事だと思っています。
端的にいうと勢いです。監査法人入社3年目くらいから、「会社の現場を経験したい」「会社の内部で公認会計士としての力を発揮したい」という思いを抱いていました。そこで2人目を出産した後、転職を考え始めました。
当初は経理職を狙っていたのですが、夫は朝早く出社、夜遅く帰宅する生活で、かつ、月1回海外出張があり、ほぼワンオペだったので、残業が必須の経理職は難しいなと思いました。
そんな時に先輩から「最近、常勤監査役っていう案件があるらしい」というお話を伺って、帰宅後にネットで検索していたら、たまたま常勤監査役募集の案件を見つけました。
詳細はわからなかったものの応募して、ありがたいことにご縁をいただき就任したというのが経緯です。当時、女性会計士で監査役に就任する動きが出始めた頃でした。
監査役就任前の準備と勉強
座学も必要だが、1人では限界があるので仲間に出会える場へ
就任が決まってすぐに、監査役と名の付くタイトルの本を片っ端から買い漁って情報収集をしました。
就任してからは、監査懇話会や監査役協会、JKKなどでいろんな方の生の話を聞いて、疑問、不安を解消していました。
勉強しようと思えば、監査役が勉強できる学びの場がたくさんあるので、知識を得ることができます。また、横のつながりもできます。
ベンチャーの常勤監査役は大体ひとりポジションなので、上司も部下もいなければ、相談できる相手が社内にいない状態になります。一歩外に出れば仲間がいるので、積極的に利用するのをオススメしたいと思います。
就任決定から就任するまでの約3カ月は木内さんと同じ様に、とりあえず本屋さんへ行って、初めて監査役に就任する人向けの本を読みました。
周りに就任している方がいらっしゃらなかったので、生の情報がなかなか入手できませんでした。ただ、会社の社長から「新しい監査役像を一緒に作っていこう」といわれていたので、経験豊富な監査役と同じことをするのは難しいし、不安だと考えているのは無駄だなと思い、最後は度胸で乗り切りました。
就任後は、つてをたどって監査法人時代の先輩にお話を聞いたり、(公益社団法人 日本)監査役協会にはいったり、ひたすら勉強会・セミナー部会に参加しました。
監査役の役割とは?
取締役会の監督から社内の相談窓口まで担当
「そもそも監査役って何やっている人?」って聞かれるのですが、究極は取締役が不正とか違法行為をせずに仕事をしているかを監督する人っていう位置づけだと思います。それを見るために取締役会には必ず出て、社外役員を含めてけん制しておりました。
ただ、取締役会だけ出ていて正しい判断ができるかといえば、できません。常勤監査役が会社の中に入り込んで本当にプロセスが正しいのか、と背景も知ることが大切だと思うので、役員会以外に私が「絶対に何が何でも出る」と決めているのが、取締役会に上げる前の会議、経営会議です。
管理部に近いポジションなので、管理部の整理MTGや事業部の方の朝礼など、事業部の雰囲気や状況を理解するようにしています。後は社員の方のカレンダーを見て、気になる会議があれば、オブザーバーとして出させてもらえることもあります。弊社は、週5回フル出社しているので、気軽に会議室に入って出席させていただくことも。
ランチに誘っていただくこともあります。私(監査役)から特定の方をランチに誘う時は悩むのですが、心配な方がいたら誘ってみたり、雑談ベースでヒアリングすることもあります。
真実の把握が一番大事だと思っているので、従業員の生の声を大切にしています。前の会社で常勤監査役に就任していたときは、ランチタイムやすれ違ったときに声を掛けたり、社内の活動に参加したり、気軽に話し掛けやすい立ち位置を目指していました。内部通報まではいかない、愚痴レベルでもOKな窓口を開設したり。後は、新人さんに交じって新入社員向けの研修に参加もしていました。
直接、評価対象ではないのが(従業員の方にとって)大きいようで、いろいろな立場の人が本音を伝えてくれるので、間を取り持ったりでき、大きなトラブルは起きませんでした。
経営陣とのコミュニケーションで気を付けていること
信頼関係を構築することが大事。会社を良くしたい方向性は同じ
一番気を付けていることは信頼関係を築くことです。監査する側、される側ではありますが、良い会社にしていきたいという方向性は一緒。
就任当初は、監査は何をやっているのかなどをかみ砕いてわかりやすく、専門用語を使わずに「監査をされるのは嫌かもしれないけれど、監査をすることによって取締役の方も責任を果たしてることが証明できる」など、繰り返しお話させていただきました。
後は、社内の取締役3名との1on1を月に1回実施させてもらっています。
1on1では聞くに徹底したいので、普段から聞きたいことをwordなどに書き留めておいて、皆さんの脳内を理解できるように、インタビューしています。
信頼関係が大事なのは私も同意でして、そこは気をつけています。ベンチャー企業の社長さんは自分で事業を育てあげてきているという自信、プライドなどをお持ちですので、そこは大事にしたい。一緒に会社を良くしていくっていう姿勢を忘れないようにしています。
コミュニケーションで気を付けていることは3つあります。
1つ目は、監視する立場という雰囲気を出しすぎないようにすること。
2つ目は、執行側の考えを理解すること。「あなたの気持ち、どんなことを考えているのか教えてください」っていう姿勢でいます。今まで監査してきた会社はベンチャーやスタートアップでビジネスの流れが激しいので、そのビジネスの流れを止めずに大きな穴を作らないってことが重要だと認識しています。
最後の3つ目は、基本的に「何とかすべきです」というような発言はしないようにしています。執行側に気づいて改善してもらうよう働きかける提案をすることを意識しています。
監査役のオファーを引き受ける基準
経営者の方とお話しをしてコンプライアンス意識があるかどうか、なぜ上場したいのか、会社を大きくしたいのかと考えをお聞きして、引き受けるか判断したいと思います。後は、監査に対する認識を確認したいです。
単に「上場するには監査役が必要なんだよ」程度だと、お受けしないかと思います。苦労するのが目に見えているというか、大変だと思いますので、「どうぞ、うちの会社を見てください。悪いところは指摘してください。監査が重要だと考えています」という風な視点をお持ちなのかが基準になると思います。
まずは、経営者の誠実性というところですね。面接の時に質問をして、悪いところも答えてくれるかというのを確認するようにしています。ビジネス上、問題は何かしらあるはずなので、それを言ってくれないというのは、就任した後もきっと苦労すると思います。
後は、従業員を大事にしているか。メンバーがいないと会社は継続しませんので。
これから監査役を目指す方へのアドバイス
監査役って本当に重責を担っております。やはり丁寧に信頼関係を築いて、会社を良くしていこうという思いのもとで働けるのはとても魅力的なポジション。気付けば私も今の常勤監査役に就任して今5年目ですが、ものすごく成長したなと思っております。
つらいことばかりではないのですが、会社によってはいろいろなことが起きます。
それを経験することによって自分も貢献できるし、自分自身の成長につながることができます。独立したポジションだからこそ客観的に会社を見ることができる、すごくいい仕事だなと思っておりますので、監査役に興味を持っていただければいいなと思っております。
女性会計士で監査役に就任される方も増えて、昔よりハードルが低くなってきたなと感じます。一方で、監査役もやはり役員ですので多くの従業員の人生とや会社の成長に対して責任を負う立場です。
責任を果たすために自発的に仕事や役割を見つけて行動することが当たり前に求められますので、従業員とはかなり仕事の仕方やマインドが違ってきます。
正直この8年振り返ってみると何が正解かわからない中、チャレンジと変化の連続で大変なことも、「もう辞めよう」と思ったことも何回もあるのですが、一つ一つ乗り越えることで会社も自分自身も成長できた時間だったかなと思っています。
誰にでも簡単に勧められるような仕事ではないですが、会社を良くしたいという気持ちをお持ちの方であれば、決してできない仕事ではありません。ぜひチャレンジしていただきたいです。
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