公認会計士がフォレンジックへ転職した際の仕事内容やキャリアについて解説!

公認会計士が フォレンジックへ転職した際の仕事内容

フォレンジック(不正調査)は、公認会計士のキャリアとしては比較的新しい分野です。

企業の不正・不祥事が世間を騒がせ、経営危機にまで発展することがあります。こうした不正への対処が求められるケースが近年増えており、フォレンジックサービスのニーズが高まっています。それに伴い、キャリアとしてもフォレンジックが注目され、公認会計士の主な転職先の1つとして知られるようになってきました。

このページでは、公認会計士がフォレンジックへ転職した場合の仕事内容やキャリアパスについて解説していきます。まだなじみがないという方も多いかもしれませんが、徐々に興味を持つ方が増えてきている印象ですので、今後のキャリア設計の参考にしてみてください。

フォレンジックの仕事内容

フォレンジックは、不正調査や防止、危機対応など、不正・不祥事に関する対応・アドバイスを行う専門的な業務です。

不正といってもさまざまなものがありますが、公認会計士が携わるものとしては、粉飾決算などの会計に関連するものとなります。公認会計士のフォレンジック業務の一例としては以下のようなものがあげられます。

  • 会計に関する不正調査
  • 不正再発防止のための内部統制構築支援
  • 報告書などの作成

実際の業務内容は不正の内容にもよるところがあります。ここでは何らかの会計不正が起きたと仮定して、一般的な内容に落とし込んで説明させていただきます。

不正調査

企業が不祥事を起こした際に、ニュースなどで、「第三者委員会を設置し、調査を行っています」などといった報道がなされているのを耳にすることもあるかと思いますが、フォレンジックはこの第三者委員会としてさまざまな専門家と協力しながら調査を進めていきます。

不正の事実を解明するためには、関係者への聞き取りや資料の調査に加えて、メールデータや会計システム、サーバーのアクセス解析など、ITやデジタルに関連する調査も必要となります。

会計書類のチェックや聞き取り調査など、事実を明らかにしていく過程の業務の一部は監査と似たようなところもあります。ただ、監査よりも深く広範な調査が必要となりますので、公認会計士の力だけでは適切な調査は行えません。エンジニアや弁護士など、さまざまなスペシャリストとチームを組んで業務を進めていきます。

そのため、監査の仕事以上にコミュニケーション能力が求められます。

また、その不正が会社の業績にどのようなインパクトをもたらすのか、それらの財務数値の算定も含めた調査が公認会計士に求められます。

なお、不正調査は、実際に不正が発覚した場合にのみ行われるというわけではなく、不正の発見そのものを目的として行われることや事前の防止で行われることもあります。近年はコンプライアンス体制強化という側面から支援を行うケースが多くなっています。

不正再発防止のための内部統制構築支援

不正の再発防止には、内部統制の構築が不可欠です。公認会計士であれば、イメージしやすい業務であり、強みが生きる場面となります。

不正調査の段階で、内部統制のどこに不備があるのかを意識しながら調査を進めていくわけですが、そこで見つかった弱点を解消していくことになります。

上場企業であれば、実際に不正が行われた場合、証券取引所などから改善報告書などの不正防止策の提出が求められます。場合によっては上場廃止といったリスクもあるため、この不正防止関する業務は非常に重要です。

調査をするだけでは問題の解決にならないため、不正調査と再発防止における内部統制の構築などの業務はセットで行われることが一般的です。

調査報告書などの作成

調査結果の報告書の作成には、そこに記載する内容には特に気を使う必要があり、慎重さが求められます。

というのも、調査報告書は外部に公開されるため、取引先や投資家、報道機関なども閲覧することとなります。テレビや新聞のニュースとしてその記載内容が報道されることもあるため、誤解を招くような記載内容は避ける必要があります。

したがって、記載内容には特に注意を払う必要があります。事実に基づき客観的かつ明確に記述し、誤解を招かないように心がけることが重要です。

フォレンジックは監査法人での業務経験が生きる

フォレンジックの仕事は、監査のプロセスと似たようなところもあるため、監査法人での業務経験が生きる仕事です。

不正調査においては、経営陣や関係者に対してヒアリングをする場面も多いのですが、限られた時間の中で効率的に必要な情報を取得し、整理していくことが求められます。また、不正が起きる要因の大半は内部統制の不備が原因であることから、内部統制上の問題点を解消していくための手続きが必要です。

こうした過程は監査経験がそのまま生かせるため、監査法人でしっかりとした経験を積んでいる方であれば、比較的業務に入っていきやすいと考えられます。

ただ、監査よりも深い調査が求められるため、財務・会計知識のレベルアップも必要です。また、不正の痕跡を見つけるにあたっては、単に帳簿書類をチェックするだけでは不十分です。

広い視野で物事を考え、状況を深く理解する能力が求められます。さらに、関係者とのコミュニケーションも監査よりも慎重に行う必要があります。

また、不正の多くはIT機器やネットワークを介した手口が多いため、最新のIT/デジタルに関連する知識も必要です。監査で培ったスキルは生かせますが、さらなるスキルアップが求められます。

フォレンジック業務のやりがいや魅力

「監査の仕事は誰からも感謝されず、モチベーションが保てない」という悩みを持つ公認会計士の方はそれなりに多いと感じていますが、監査と似た部分のあるフォレンジックの仕事は、感謝されることも多いと聞きます。

不正や不祥事は企業の存続に大きくかかわる重大な問題です。ちょっとした不祥事がきっかけで、経営破綻や上場廃止へとつながるリスクがあります。

そのため、企業側も不正への対応は積極的に取り組みます。そして、調査が終わった後には、感謝されることも多くありますので、やりがいに感じることはあるでしょう。

また、大規模な不正対応において、対象企業の組織が大きく変化することがあります。その結果、明らかに良い方向へと向かっていることが実感できるケースがあり、そうした変化が見られるのも1つの魅力であると考えられます。

監査業務だと、自分の仕事が企業に良い影響を与えているといった実感が持てないこともあるかと思いますので、そういった部分でフォレンジックは魅力的だと言えるでしょう。

監査業務と比べて、フォレンジックの仕事では自分の業務が企業や組織に与える影響をより直接的に感じることができるかもしれません。もちろん、監査業務にもやりがいはありますが、両者には異なる側面があると考えられます。感謝されるという側面においては、問題が表面化している中での業務とそうでないのとでは違う部分もあると考えられます。

フォレンジック業務に向いている人

フォレンジックはどういった公認会計士の方に合う仕事でしょうか?

一概に断定できるものでもありませんが、業務内容の傾向や求職者の志向性から向き不向きを見ていきたいと思います。

監査が楽しいと思える・企業側の会計処理の誤りを多く発見できる

監査と似たような工程もあるため、前提として監査業務があまり得意ではない・苦手で監査法人を辞めたいという方にはマッチしにくいと考えられます。

監査業務にやりがいを感じるとともに、企業側の会計処理の誤りや矛盾を見つけるのが得意だった方には向いていると想定されます。

また、矛盾があった場合に、何に着目して分析を進めていけばいいのかを判断していくことも重要です。

監査の現場では深堀されなかった細かい論点を突き詰めたかったなど、もっと深く調査していきたいと思えることが多かった方は、どちらかといえば向いていると思います。

注意点としては、不正の痕跡を見つけるための業務であることから、素早く書類をチェックして早く作業を終わらせるという効率化の志向が強すぎると危険な場合があります。

作業を効率化させるプロセスが好き、という公認会計士の方も多いのですが、そうした作業的な仕事が好きで監査が好き、という方の場合は向いているとは限りません。

コミュニケーションスキルを生かしたい

不正調査というと淡々と書類に向かって仕事をしているイメージを持っている方もいらっしゃいます。ただ、ここまでで説明したとおり、関係者への取材やチームメンバーと協力して仕事を進めていくことを考えると、人と話をする機会も多い仕事だと言えます。

監査法人でもチームを組んで仕事をしていたかと思いますが、メンバーは公認会計士資格者が大半であり、共通認識も持ちやすい中での業務だったかと思います。フォレンジックの場合は、公認会計士以外のメンバーと協力する場面が多くなりますので、専門外の事柄に対する理解力や説明する能力なども必要となるでしょう。

聞き取り業務にあたっては、質問の仕方に配慮が必要なこともありますので、広い意味でコミュニケーションスキルが求められるます。

忍耐力・我慢強さがある

コミュニケーションが求められる業務がある一方で、地道な書類チェックや分析も必要なので、忍耐力が求められます。細かい業務も当然たくさんあります。

「監査の単調さに飽きたから転職したい」、という方にはミスマッチとなる可能性が高いため、注意が必要です。

フォレンジックで求められるスキルや経験

転職を検討するにあたり、監査以外ではどういった経験、スキルが求められるのでしょうか?

語学力

近年は海外展開する企業が多くなり、それに伴って海外子会社が不正に関わるケースが増えています。海外とのやりとりにおいて、英語力が必要な場合が多い傾向です。

そのため、英語に自信のある方はプラスに働くと考えられます。ただ、英語が得意ではないからといって、道が閉ざされるわけではありません。

CFE(公認不正検査士)の資格

転職時点で必須の資格というわけではありませんが、フォレンジックに従事する方で、CFEをお持ちの方は多い印象です。

不正調査における専門知識があることを示す資格であり、一定の認知度があることから、フォレンジックに興味がある場合、取得する価値はあるでしょう。

ただ、転職活動で大きく評価されるかというと、そうとも言えませんので、時間的な余裕のある方や不正調査に関する業務に強い興味がある場合は検討してみてください。

フォレンジックに携わるようになってからの取得でも遅くありません。

IT関連に強みがあればプラスに働く

IT関係の専門家と一緒に仕事をするにあたって、公認会計士自身にもある程度知識が求められます。

サーバーのログ調査など、ITに関わる実作業はエンジニアを始めとするITの専門家が行うため、実務をできる必要性はありません。

ただ、調査の中で判断が求められた際に、一定のIT関連の知識がないと適切な処置ができない場面も考えられます。


また、ITの専門家と一緒に仕事をするにあたって、最低限の理解がないとコミュニケーションで問題が起きる可能性もあります。IT/デジタル分野に関して苦手意識がある方は厳しい現場だと考えられます。

ITに強みのある公認会計士はフォレンジックに限らず需要は高いので、転職では有利に働くでしょう。

フォレンジックの求人募集を行っている企業

フォレンジックサービスを提供している企業は、BIG4系のFASやその他の独立系のFAS、コンサルティングファームが中心です。

現時点ではそこまでフォレンジックサービスを提供する企業は多くありません。

そのため、転職する公認会計士の多くはBIG4系のFASのフォレンジック部門です。注目のキャリアである一方で、現時点では選択肢はそれほど多くありません。

BIG4系のFASのフォレンジック部門への転職ハードルはそれなりに高いため、しっかりと対策をして転職活動に臨みましょう。

フォレンジックも含めて、転職における情報収集を行っている方はBridge Agentにご相談ください。

フォレンジックの繁忙期は?

企業の不正がいつ起こるかを予測することは難しく、不正調査業務の発生時期も予測がつきません。そのため、監査法人とは異なり、特定の時期が繁忙期というわけではありません。不正調査が突然発生することもあります。

監査法人であれば、企業の決算に合わせて忙しさが訪れます。繁忙期・閑散期がハッキリしており、長期の休暇が取りやすいのはメリットだと言えます。

一方、フォレンジックの場合は繁忙期や閑散期が明確ではなく、長期休暇を取りにくいと言われています。年間を通してみると、どちらが忙しいかは一概に言えませんが、フォレンジックも一定の忙しさがあります。

ワークライフバランスを重視する場合など、志向性によってはマッチしない可能性はあるので、転職先候補として検討しているが働き方の面で不安があるという方はご相談ください。

ワークライフバランスを重視したいと考えている方は、以下の記事も参考にしてみてください。

フォレンジックのキャリアに不安を持つ公認会計士もいる

監査法人で培ったスキルを生かして専門性を高めていきたいとお考えの公認会計士にとって、フォレンジックは注目すべき分野だと言えます。

ただ、公認会計士のキャリアとしてはまだ新しく、やや特殊です。その専門性の高さから「つぶしが効かなくなるのでは?」といった不安をお持ちになられる方もいらっしゃいます。

現時点では王道的なキャリアであるとはいい難いため、慎重になることもあるでしょう。

そういった不安も含め、興味はあるものの迷っているという方は、ぜひBridge Agentにご相談いただければと思います。

長年にわたり公認会計士のキャリア支援を行ってきたコンサルタントがしっかりと対応させていただきます。

フォレンジックのスペシャリストは少ないため、ポジションをつかむチャンスがある

フォレンジックは今後大きく伸びていく分野だと言われています。

会計に関する不正・不祥事はもちろんのこと、サイバー攻撃や人的な情報漏えいなど、会社の信用・価値を毀損するリスクは年々高まっています。

そういった中で、不正や不祥事の調査、防止に対応できる専門家は不足している状況です。それは、キャリアを構築していくにあたってチャンスだと考えられます。

現時点では、ロールモデルが少なく、その分不安はあるかもしれませんが、新しいキャリアを求めている方にとってはチャンスが多い転職先です。

フォレンジックの経験を持つ人材の需要も高まる可能性はありますので、興味をお持ちの方は一度相談いただければと思います。

この記事の監修者

ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太

新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。

エグゼクティブコンサルタント 仁木 正太

 

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Bridge Agent編集部

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