「人事の年収アップ方法が知りたい」
「人事のキャリアアップとは?」
「人事の仕事によってどのくらい年収が変わるのか」
人事のキャリアアップや年収アップを目指している方は多いのではないでしょうか?
最近では、「人材が持つ経験や知識・スキル」を会社の資本とし、企業価値の向上を図る企業が増えています。
こうした「人的資本経営」をうまく遂行するために、人事という職種が非常に重要視されています。
本記事では、事業会社で人事経験があり、IPO準備企業へのCxOなど幹部ポジションの支援に強いBridge Agentのシニアコンサルタント・植木大輔氏に、IPO準備企業におけるエグゼクティブクラス・ハイクラス人事系職種の転職事情について取材しました。
人事のキャリアにお悩みの方は、お気軽にBridge Agentにご相談いただければ幸いです。
Bridge Agent シニアコンサルタント
植木 大輔
富士通グループの人事にて採用/組織開発/制度に13年携わった後、大手・上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした”エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスを行う人材会社へ転職。その後、リクルートにて経営層・エグゼクティブ層(CEO・COO・CFOや事業部門責任者等)に特化した人材紹介事業に従事し、上場企業、IPO準備企業へのCxO等幹部ポジションで約40名の支援を手掛け、2023年4月よりBridge Agentに参画。
目次
転職市場における人事人材の市場価値は上昇している
転職市場における人事人材の市場価値は上昇していると考えられます。
研究段階ではあるものの、上場企業では人的資本経営の取り組みが株価に影響することもあり、株主に対するディスクロージャー(情報開示)の中でも必須条件となっているためです。
また、IPO準備中の企業では上場企業ほど人的資本経営が重視されていないと誤解されがちですが、「上場会社と同水準の経営」を目指しているはずです。
IPOを目指すのであれば人的資本経営を重視した経営を行うべきです。
上場企業が求める企業価値には、人事管理の側面が重要な役割を果たします。IPO準備の段階から、人事採用責任者としてこの観点を理解できる人材を採用するか、社内教育を行うなどの対策が必要です。
IPO準備企業におけるエグゼクティブ・ハイクラス層の年収相場
Bridge Agentは、主にIPO準備フェーズの企業様がご支援先なので、IPO準備企業における人事(エグゼクティブ・ハイクラス)のポジションを想定した役職別の年収相場は以下です。
役職 | 年収レンジ |
CHRO | 800万円~1200万円 |
人事部長 | 800万円~1000万円 |
人事課長(マネージャー) | 500万円~800万円 |
人事領域の最上位役職はCHRO(最高人事責任者)であり、次いで人事部長、そしてマネジャーが続きます。
IPO準備企業では、CHROと人事部長がほぼ同じ役割を果たすことが一般的ですが、人事部長は人事領域の責任者として期待が高いため、経営層のCHROよりも年収は低くなる傾向があります。
人事の代表的なキャリアパス
キャリアパスの一例として、採用HRBP(HRビジネスパートナー)や労務担当者から始まり、人事部長やCHROに至るまでには段階があります。採用から始まるキャリアパスでは、会社の成長や上場に向けて事業規模が拡大する中で、採用責任者の責任範囲が広がることがあります。
HRBPは特定の事業部に所属し、部門の採用トップとして事業部長と連携しながら採用戦略や人事戦略を策定します。そこから、複数の事業部を統括するCHROのポジションを目指すことも十分可能なキャリアパスです。CHROになるためには、採用、労務、制度設計など人事の幅広い機能を網羅的に経験する必要があります。
通常は、採用の経験を積んだ後に、HRBPとして事業戦略と人事戦略を掛け合わせる経験を積み、その後、人事部長やCHROにステップアップする流れが一般的なキャリアパスです。
IPO準備企業における人事の役職
IPO準備企業では、CxO(COOやCFOなど)の編成について、社長の考え方や資金調達先のベンチャーキャピタルなどの意見を交えながら検討されています。
特に人事の役職設定については、会社によって異なりますが、人事責任者(人事部長)を経営レイヤーであるCHROに格上げするかどうかなどを検討しています。
IPO準備企業における人事マネジャーの役割では、採用や制度設計、労務など、各領域でプレイングマネメントを行うことが一般的です。ただし、人事の実務は外注化することも可能です。
例えば、労務関連が全て社労士事務所に外注される企業もあります。外注の範囲やコストによって、マネジャークラスの役割が変わることもあります。
一方で、入退社が頻繁な企業や季節要因などで社員・パート・アルバイトなど人員数が変動する企業では、採用だけでなく労務関連のスキルも必要です。なぜなら、社内データを集約し、ロジックを組み立てる必要があるため、外注することが難しいからです。
人事の役職別の仕事内容
人事の仕事は、会社によって期待される役割が異なり、10社あれば10通りのあり方があります。
A社で経験したことがB社で再現できるとは限らないのが、人事の難しいところです。
「人事テリトリーの責任者」が人事部長であり、さらに企業価値を高めるために人事の側面から働きかけるのがCHRO(最高人事責任者)です。
人事課長(マネジャー)は、一人もしくは部下と役割分担をしながら、自ら実務に取り組むプレイングマネジャーとしての役割が多いです。
役職 | 役割 |
CHRO | 人事領域の責任者+企業価値を高める行動 |
人事部長 | 人事領域の責任者 |
人事課長(マネジャー) | 人事実務のプレイングマネジメント |
具体的に言うと、例えばバーティカルSaaS系事業を展開する企業では、建築・不動産・医療などの業界に精通した営業人材やエンジニアが共存しています。異なる専門性を持つ人材の報酬設計や評価制度を調整することが重要です。
企業が複数の商品やサービス(プロダクト)を立ち上げ、拡大する際には、既存の社員とは異なる専門性やポジションを持つ人材をターゲットに採用することもあります。そのため、採用市場のトレンドやニーズを理解する必要があります。新しいポジションを設定したり、競合分析を行い年収相場を把握し、人事制度と調整を行います。
IPO準備段階と上場後では、投資家や主幹事証券会社、その他のステークホルダーに対して、ロジックを構築し説明できる人材がCHROに求められると考えられます。これは人事部長とは異なる役割です。
IPO準備企業が求めるCHROの人物像
上場を目指すIPO準備企業が、N-3期やN-2期の段階でCHROを募集する背景には、主に以下の理由があります。
採用戦略の構築
社員数が増える過程で、外部から迎え入れた新しい人材と既存メンバーとの間で給与や制度面での調整が必要となります。
CHROは、採用戦略を見直し、組織の成長に合わせた適切な人材の確保や育成を担当します。
労務管理と給与計算の重要性
N-2期以降は企業の急速な成長に伴い、労働時間や従業員のモチベーションに関する問題が顕在化しやすくなります。従業員の適切な労働時間と正確な給与支払いが求められるため、CHROや人事部長は労務管理の強化と給与計算の正確性を重視します。
ブレーキ役としての役割
上場を目指す企業では、成長に伴うリスクや課題を把握し、適切な対策を打つことが重要です。
CHROや人事責任者は、組織の健全性を保つために労務管理や給与体系の整備を行い、従業員が適切な環境で働けるように配慮します。
このように、CHROや人事部門の責任者は企業の成長過程で重要な役割を果たし、組織の持続的な発展や上場準備に向けて労務管理や人事戦略の最適化を進めます。
IPO準備企業における人事の仕事内容
採用
IPO準備中の企業では、新卒採用がほぼ行われず、中途採用やリファラルでの採用が主流です。
特に自社からの直接スカウトが一般的で、どのポジションにどんな人材を配置するかは採用戦略と予算設計から始まります。
人材紹介会社の選定も重要です。リファラル採用の場合、紹介者である社員への報酬(インセンティブ)や非金銭的なインセンティブについても社内で併行して設計されます。
採用広報も重要で、マーケティングや広報部門との連携が欠かせません。
多くの企業が力を入れている採用広報は、魅力的な候補者を引きつけるために非常に重要です。
まずは、採用対象を明確化し、その後、会社のブランディングや採用プロセスの整備を行います。
たとえば、エンジニアをターゲットにする場合、CTOが採用活動の中心になり、会社の価値を示すことがあります。ポイントは、「会社のブランディングをリードするキーマンは誰か」という点です。
その後、新卒の採用によって会社の安定したカルチャーを構築する流れに移ります。
教育研修
IPO準備中の企業では、教育研修制度が整備されていない場合があります。
このような場合、離職防止や早期にパフォーマンスを発揮してもらうための対策は、入社後の教育研修(オンボーディング)に置き換えられます。
特に中途採用比率が高い企業では、入社後のオンボーディングの内容を充実させる必要があります。
また、求人情報と入社後の実際の状況が異なっていると早期離職のリスクが高まるため、注意が必要です。早期離職が目立つ場合、「求人内容はいつ・誰が設定したものなのか?」という点について問題が生じる可能性があります。
採用担当者が求人を出してから時間がたつと、現場のニーズが変化し職務内容に齟齬が生じることがあります。重要なのは、オンボーディングのプランを練りながら、求人内容と現場の実際のニーズに適合するよう常にチェックすることです。
採用プロセスが進むにつれて、情報の共有と調整を行い、新入社員が適切な期待を持って活躍できる環境を整えることが大切です。
労務管理
IPO準備企業では、勤務実態を見える化(数値化)するためにシステム導入をセットで考えます。労務管理システムの導入が完了したら、その必要性を丁寧に説明する必要があります。
ベンチャー企業では、「勤怠管理は自分の仕事に集中したいから」と、蔑ろにしがちですが、このような状況では、人事労務の観点から残業の指摘をしても、優先順位が低いと見られることがあります。カルチャーと会社の労務管理の適切なバランスを見つけることが重要です。
労務管理をまとめる人事担当者は、採用やオンボーディングの担当者は周りを巻き込みながら仕事を進める営業的なタイプが多い印象です。一方で、労務管理や制度設計を担当する人事担当者は、ロジックを重視した理路整然とした方が多いと感じます。
会社を上場させるためには、労務管理の職務を遂行する人事担当者は、規定やルールをしっかり監視できる人が適任と考えられます。会社の代表や経営陣に対して、上場に向けた労務管理と給与計算の重要性をしっかりと説明し、適切な打開策も提案できる人が求められます。
人事評価・制度企画
IPO準備企業のような環境では、人事評価は「給与規定」と「評価規定」の整備から始めます。
中途採用者の等級設定が社内規定(等級/給与)や職責の逆転現象がおきるなどカオスな状況を避けるために、どのような基準で等級を決定するか、対象ポジションに求められる行動や成果の要件を明確に定める必要があります。
制度を初めて構築する場合、将来的に柔軟な改善が可能ですが、既存の制度では中途採用者の等級調整やパフォーマンス評価の調整など、複雑な調整が必要とされます。
このような業務は再現性が求められるため、経験を活かして転職先でも成功を収めることが評価されます。
人事の転職支援事例
某ロボットベンチャー・A社における採用責任者の転職事例をご紹介します。
エンジニアのバックグラウンドを生かして年収アップ
A社:ロボットベンチャー
募集ポジション:採用責任者
A社は、セールスやマーケティングに加えて、ハードウエアエンジニアやソフトウエアエンジニアも在籍する組織。さまざまな職種で採用し、増員して事業を拡大したいと考えていた。そのため、採用広報を強化したいというニーズがあった。
B氏のプロフィール
年齢:40代人事経験:元エンジニアで人事に転身。エンジニアの採用やオンボーディングから離職率を下げる施策を実行した実績あり
年収:転職前900万円→転職後1000万円
転職理由:人事から他部署への異動が決まったが、人事でのキャリアを積みたいと考えて転職を決意
B氏のエンジニア出身のバックグラウンドと人事の経験が、A社の募集要件にフィットしました。エンジニアの気持ちや事情をよく理解できるB氏にとって、A社の事情は理解しやすかったようです。
また、A社としては、「業界の事情を理解する人事が必要」と考えており、A社のニーズを満たし、B氏は報酬をアップさせて転職に成功しました。
人事で年収を上げるには?
人事に限らず、年収を上げる近道は昇進や昇格ですが、さらなる成長を目指す場合は、若いうちに転職をする事も検討してみてください。
なぜなら、1社での昇進や昇格だけでは市場価値が向上しにくく、年収がアップしたとしても市場価値が高まりにくく、頭打ちになりやすいからです。
自身が入社したときと現在の会社の状況を振り返りっていただき、今後昇進や昇格を目指すのか、現在の会社で目指すのか、もしくは会社の成長が停滞している気配を感じた場合は、外部で新たな機会を求めることもキャリアアップや年収アップにつながりやすいと言えます。
年収アップが叶う転職のコツ
おおまかに以下の要素を意識して転職先を選ぶことで、年収アップにつながる可能性が高まります。
成長フェーズの企業を選ぶ
転職先の企業が成長フェーズであることが重要だと考えます。従業員数が増加している企業では、年収アップの可能性が高まる傾向があります。
経営状況を理解する
そもそも、人事としては企業の収益や利益、給与に回せる原資や配分を理解している必要があります。
なぜ年収がその水準になるのかを理解し、企業の経営状況と年収アップの根拠を結び付けることが成功のポイントです。
価値提供と給与の関連性を理解する
自身がどのような価値を企業に提供できるのかを明確にし、その価値提供と年収アップの関連性を理解することが重要です。
自分の仕事が企業の収益や成長にどう貢献しているのかを把握し、それが給与に反映される仕組みを理解しましょう。
人事で転職を検討中の方へのアドバイス
「石の上にも3年」という言葉通り、同じ会社で3年程度の経験を積むことが大切です。
その後、転職を検討する際には、市場価値を高めるために成長産業や成長企業への転職をおすすめします。
また、人材コンサルタント業界での経験も市場価値を向上させる手段の一つです。
たとえば、Bridge Agentなどの転職支援サービスでの経験は、さまざまな職種の人材と接する機会が増え、「引き出し」が多くなります。これにより、人事としてのスキルや経験が磨かれます。
自身の市場価値を高めて次のキャリアに生かすことができます。もしコンサルタント業界に興味があれば、弊社でも募集していますので、お気軽にご連絡ください。
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