事業再生コンサルタントは、名前の通り「事業再生」にフォーカスしており、企業や事業の立て直しを図ります。ネクストキャリアとして、事業再生コンサルタントへの転職を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
そこで本記事では、事業再生コンサルタントの概要や転職するメリット、求められるスキル・経験などを詳しく解説します。平均年収や役立つ資格についても触れていますので、転職を考えている方はぜひ参考にしてください。
事業再生コンサルタントの求人情報については、公認会計士・税理士・弁護士・管理部門のハイクラス転職に特化しているBridge Agentまでお気軽にご相談ください。
目次
事業再生コンサルタントとは
事業再生コンサルタントは、経営が困難になった企業や事業を対象に、その再生と成長をサポートする専門家です。戦略コンサルタントや業務コンサルタントのキャリアの1つとして考えられています。
事業再生コンサルタントの大きな特徴は、ハンズオンでの支援です。クライアントにアドバイスをするだけでなく、実際に企業の中に入り込み、現場でさまざまなサポートを行います。
事業再生コンサルタントとして働くための一般的な転職先は、事業再生コンサルティングファームやFASのリストラクチャリング部門、PEファンドなどです。
事業再生コンサルタントの業務内容
事業再生コンサルタントの具体的な業務は、以下の4つです。
- デューデリジェンス(財務DD・事業DD)
- 事業再生計画策定
- 計画実行状況のモニタリング
- 実行支援
それぞれ解説します。
デューデリジェンス(財務DD・事業DD)
デューデリジェンス(略称DD)は、大きく分けて財務DDと事業DDの2つがあります。財務DDとは、対象企業の財務状態を詳しく調査することです。財務諸表を分析しつつ、実態債務状況の把握をします。
事業DDは、対象企業の市場環境や競争状況、事業モデル、成長戦略などを詳しく調査することです。上記の2つが、事業再生のプロセスとして一番初めのフェーズに該当します。
事業再生計画策定
財務DD・事業DDの結果に基づき、困難な状況にある企業が回復するための具体的な戦略と手順を定めるのが、事業再生計画の策定です。クライアント企業の経営陣と協力しつつ、実現可能な計画を立て、債権者からの同意を得るのが目的となります。
企業の財務状況の改善には、金融機関の協力が必要です。金融機関とミーティング(バンクミーティング)を行い、スケジュール調整や利害調整をします。
計画実行状況のモニタリング
事業再生計画策定が終わったら、実際に計画を実行し、進捗を定期的にモニタリングする段階に入ります。計画の実行状況を定期的に確認するために、週次・月次・四半期ごとのミーティングを実施します。
事業再生計画を策定する際は、収益性や債務比率など、目標達成を測定するための具体的な指標が設定されるのが一般的です。ミーティングでは、設定した指標を達成しているかどうか、進捗がどのようになっているかについて議論します。
実行支援
事業再生計画の策定や経過観察だけでなく、実際の実行支援も事業再生コンサルタントの仕事です。新しいビジネスモデルの導入やコスト削減、内部の組織改革など、さまざまなサポートを行います。
たとえば新しいビジネスモデルの実施をする場合は、新しいモデルの設計と実装プロセスをサポートし、事業構造の変更がスムーズに進行するよう指導します。高度な戦略的思考と実行力が求められる難しい業務です。
事業再生コンサルタントの平均年収
事業再生コンサルタントの年収は、所属している会社や職位によって大きく変化します。一般的な再生系コンサルティングファームで、アソシエイトであれば、平均年収は600万〜800万円程度が相場です。シニアアソシエイトになると、年収1,000万円を超えます。
どこまで昇進するかにもよりますが、年収の幅としては600万〜1,500万円程度と考えておくと良いでしょう。PEファンド系の場合は、年収2,000万円を超えることも珍しくありません。
年収をアップしたいとお考えの方はお気軽にご相談ください。
事業再生コンサルタントとして働くメリット・やりがい
事業再生コンサルタントとして働くメリット・やりがいとしては、以下の3つに大別されます。
- 危機に瀕している企業・事業の再生に携われる
- 比較的年収が高い
- キャリアの幅が広がる
それぞれのメリット・やりがいを解説します。
公認会計士がコンサルティング業界に転職するメリット・デメリットについて詳しくは、以下の記事も参照してください。
危機に瀕している企業・事業の再生に携われる
事業再生コンサルタントとして働くメリット・やりがいとして明確なのが、困難に直面している企業・事業の再生に携われる点です。自分の働きによって1つの企業が生まれ変わっていくという、ハードではありますが、大きな達成感を味わえます。
事業を再生し、安定的に成長していくためには、DDが欠かせません。数字と向き合いつつ仮説を立て、クライアント企業と一丸になって取り組むことに楽しさを感じる方も多くいます。
比較的年収が高い
比較的年収が高いのも、事業再生コンサルタントとして働くメリットです。国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は458万円です。一方、事業再生コンサルタントの年収は、先ほども紹介したように600万〜1,500万円程度が相場とされています。
事業再生コンサルタントに限らず、コンサルティングファームは利益率が高く、基本的に平均年収が高い傾向にあります。ただし、その分ハードワークが求められることも多いため、ワークライフバランスを重視したい方は注意が必要です。
キャリアの幅が広がる
キャリアの幅が広がるのも、事業再生コンサルタントとして働く上でのメリットです。事業再生コンサルタントは、財務DD・事業DDや金融機関を含めたステークホルダーとの利害調整など、さまざまな経験を通してスキルアップができます。
ほかのコンサルティングファームはもちろん、コンサル業界以外での活躍も可能です。金融系のキャリアのゴールと言われるPEファンドへの転職も十分狙えます。PEファンドの働き方について詳しく知りたい場合は、以下の記事も参照してください。
キャリアについてのご相談は以下よりお気軽にご連絡ください。
事業再生コンサルタントへの転職で求められるスキル・経験
事業再生コンサルタントへの転職で求められるスキル・経験は、以下の3つです。
- 分析力・課題解決力
- コミュニケーションスキル
- 事業改善の経験
それぞれのスキル・経験を解説します。
分析力・課題解決力
事業再生コンサルタントへの転職でまず求められるスキルは、分析力・課題解決力です。
事業再生コンサルタントの仕事は、財務DDと事業DDから始まります。それぞれの結果から企業の状況を詳細に分析し、問題の根本原因を特定しつつ、ロジカルに仮説を立てる力が必要です。
分析結果に基づいて、実行可能な計画を策定し、企業の改善につながる戦略を提案できる力も重要です。ハンズオンでの支援をする場合は、分析力・課題解決力を常に高いレベルで発揮し続けるタフさも求められます。
コミュニケーションスキル
事業再生コンサルタントへの転職では、コミュニケーションスキルも重要です。業務では、経営者や金融機関などさまざまなステークホルダーと効果的にコミュニケーションを取り、サポートを得なければなりません。
提案する再生計画や改善策に対して、ステークホルダーの理解と同意を得られるよう、説得力のある説明をする力も求められます。「交渉力」とも言い換えられますが、単なるコミュニケーションではなく、支持を集める力が重要です。
事業改善の経験
事業再生コンサルタントへの転職では、特定のスキルセットに加えて、事業改善の経験もあると良いでしょう。
事業再生の一連のプロセスは多面的であり、理論的な部分だけでなく、企業のオペレーションに実践的に関わる能力も必要です。評価されやすい具体的な経験としては、業務プロセスの最適化やコストカット、生産性向上などの改善実績などが挙げられます。
負債再編、資金調達戦略の立案と実行など、財務面での改善経験も高く評価されます。
事業再生コンサルタントへの転職で役立つ資格
事業再生コンサルタントのスキルセットを補強する手段として、資格の取得もおすすめです。転職で役立つ資格としては、以下の4つがあります。
- 公認会計士
- 税理士
- MBA(経営学修士)
- 中小企業診断士
それぞれの資格を解説します。
公認会計士
公認会計士は、会計および財務の専門家です。企業の財務状態を正確に把握し、適切な会計基準に沿って財務諸表を作成できます。
事業再生コンサルタントは、財務DDの段階で、財務上の問題点を特定しなければなりません。公認会計士であれば、企業が直面している財務問題の根本原因を特定し、改善するための計画が立てられます。
「公認会計士であれば、問題なく財務分析ができるだろう」と評価されるため、事業再生コンサルタントへの転職で有利になります。
税理士
税理士は、税務の専門家です。税理士試験に合格するのが一般的な資格の取得方法ですが、公認会計士の資格を持っていれば、税理士として登録できます。
税理士は税金や税務について熟知しており、どのようにすれば税金を節約できるかを考えられます。節税ができれば、当然企業のキャッシュフローも改善するため、こうした面で税理士の知識が役立つでしょう。
企業再生計画では税務戦略も策定するため、そこでも税理士の知識が生かせます。
MBA(経営学修士)
MBA(経営学修士)は、厳密に言うと資格ではなく、ビジネススクールや大学院で与えられる学位です。試験を受けるのではなく、経営学を修了することで与えられます。「欧米諸国に留学して取るもの」というイメージもありますが、国内でも取得可能です。
MBA(経営学修士)を取得する過程で、戦略的思考や財務分析、リーダーシップ、組織の問題解決といったスキルが養われます。事業再生コンサルタントとして、事業再生計画の策定する際に役立ちます。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業庁が認定している国家資格です。中小企業の経営や組織の問題点を診断し、解決策を提案するための専門知識が養われます。受験資格はなく、一次試験と二次試験から構成されます。ストレートで合格する確率は10%以下と、難易度の高い試験です。
公認会計士と中小企業診断士を両方持っていれば、財務面だけでなく、経営面からも事業再生に貢献できます。国家試験であることから信頼性も高いため、取得をしておいて損はないでしょう。
事業再生コンサルタントのキャリアパス
事業再生コンサルタントが持つ分析力や問題解決能力、交渉力などは、他のコンサルティングファームでも高く評価されます。特に事業再生系は、財務面での立て直しが必要であり、同じような経験をしている方であれば即戦力として活躍できるでしょう。
コンサルティングファーム以外の転職先としては、事業会社や投資銀行、PEファンドなどがあります。事業会社の場合は、スタートアップ・ベンチャー企業のCFOなど、企業の経営層として転職するケースも珍しくありません。
最後に、転職とは異なりますが、起業して「経営者」としての道を進むケースもあります。上記のように多様なキャリアパスを描けるのが事業再生コンサルタントの魅力です。
未経験から事業再生コンサルタントへの転職は可能か
結論から言うと、未経験でも事業再生コンサルタントへの転職は可能です。もちろん戦略コンサルティングや業務コンサルティングなどの経験者は、事業再生コンサルタントとしての転職に際して優遇される傾向にあります。
しかし、コンサルティング未経験でも、財務・会計の専門的な知識を持っており、関連する経験があれば十分にチャンスはあります。事業再生コンサルタントは、財務面での立て直しを図るのが基本なので、数字に強い人は高く評価されるでしょう。
事業再生コンサルタントへの転職はエージェントの活用がおすすめ
事業再生コンサルタントは、財務や経営、マーケティングなど幅広い知識が要求されます。ハンズオンでの支援をする場合は、体力的・精神的なタフさも求められる仕事です。
しかし危機に直面している企業・事業の再生に立ち会うなど、事業再生コンサルタントならではのやりがいが感じられ、年収面やキャリア面でのメリットもあります。事業再生コンサルタントへの転職に関心がある場合は、転職エージェントを活用して情報を集めましょう。
公認会計士・税理士・弁護士・管理部門のハイクラス転職に特化しているBridge Agentは、コンサルティングファームの求人情報も取り扱っています。何か相談がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。