激務だから転職しない方がいい?IPO準備企業の経理へ転職するメリット・デメリット

IPO準備中のベンチャー企業の経理職は激務で過酷な環境だと思っている方は非常に多いです。

こうしたことから、IPOに興味は持ちつつも、端から転職先の候補として除外されている方も少なくありません。

このページでは、IPO準備企業は本当に激務で忙しいのかどうかを見ていくとともに、IPOを視野に入れているベンチャー企業で働く魅力やキャリアパス、求人探しについても紹介していきます。

まずは転職相談をしたいとお考えの方は、Bridge Agentにお気軽にご相談ください。

IPO準備企業の経理職は基本的に忙しい

最初に結論を記載すると、激務かどうかはさておき、IPOを目指すベンチャー企業の経理職は忙しい傾向にある職場であることは間違いないと言えます。

理由としては、IPO準備に伴って経理部門が果たす役割が大きいという側面があります。それ以外の要因として、そもそもベンチャー企業は人員が不足している傾向にあり、その中でも特に管理部門の人員の補充は後回しになりがちなので、1人にかかる負担が必然的に高い傾向にあるからです。

人員が不足する中で上場企業レベルの会計処理が求められ、経理業務フローの変更から実務まで含めて対応する必要があることから、ハードになりがちであると言えます。

ある程度の業務量は覚悟しておくべきであることは間違いないでしょう。

業務量は企業の内部状況やフェーズ、ポジションによるので必ずしも激務ではない

ただ、忙しさの度合いは企業やポジションによります。

IPO準備におけるフェーズのどのあたりに来ているのかにもよりますし、各企業の管理部門体制がどこまで構築されているかにも大きく関わります。人員体制が企業により大きく異なることから一概に言えない部分です。

それに、常時忙しいわけではありませんので、必ずしも過酷な環境が永遠に続くわけではありません。

会社の状況やポジションによっては思っているよりかは忙しくないケースもありますので、忙しさという面では求人選びが重要であると言えます。

上場準備の中心メンバーの1人としての経理職なのか、それとも単に経理部門のいちスタッフ職員として通常業務を行うことが求められての採用なのかにもよって変わってくるところはあります。

上場準備の中心メンバーとしてリードする立場であれば状況によっては激務ですが、一般社員での採用であれば、リモートワークも含めた柔軟な働き方を早々に取り入れた働きやすい環境のベンチャー企業も増えています。忙しさはありつつも意外と働きやすくて良かったというケースもあります。

基本的に忙しい傾向にあることは間違いなく、大変ではあるのですが、慢性的に忙しいかというとそうとも限りませんので、しっかりとした情報収集を行うことで過度な残業が発生する職場への転職は避けられる可能性はあると言えます。

当社ではIPO準備企業への転職に興味をお持ちの経理職の方向けにこうした面も含めたアドバイスができますので、興味がある方はお気軽にご相談いただければと思います。

忙しさに見合った対価が得られる可能性

忙しさはあるものの、IPOを目指す現場でしか得られない経験も多くあり、将来的なキャリアに広がりが生まれます。

また、会社が成長することでその分対価(収入やポジションなど)が得られる可能性もあることから、忙しさに見合った(あるいはそれ以上の)報酬が得られる可能性がありますので、ベンチャー企業は多くの職種で近年一定の人気がある転職先となっています。

転職で年収アップを実現される方も多いため、転職にあたって重視する内容によってはベンチャー企業がマッチするケースも多くあります。

当社ではベンチャー企業向けにIPO支援コンサルティングを行っておりますが、そうしたつながりからIPOを目指すベンチャー企業の情報提供には特に強みがございますので、情報収集中の方はぜひ一度ご相談いただければと思います。

IPOの各フェーズにおける経理の役割と忙しさ

IPOにおけるフェーズごとの一般的な特徴と実務でIPOに関わる場合における忙しさの度合いについて見ておきましょう。

直前々々期(N-3期)以前

上場申請期(N期)の3期前であるN-3期は監査の受け入れができる状況を作っていく必要があり、社内体制を徐々に整備していく段階です。

具体的には社内規定の整備や監査法人の選定、主幹事証券会社の検討など本格的なIPO準備を始める前の準備期間と言えます。

忙しさという点では、N-3期以前のフェーズは具体的にIPO準備に関する実務が本格的に進行しているわけではないので、通常業務+α程度であり、基本的に特別忙しいというわけではありません。

しかし、N-3期の後半にかけてIPOに向けて体制整備のプロジェクトが始まるケースが多いことから、ポジションによっては徐々に忙しくなっていきます。

経理も含めて管理部門の人員がほぼいないなど、大きく不足している企業の場合、人材採用が課題となるケースが多くなっていきますが、人員が整うまでは経理以外の管理部門業務もやらなければならない可能性があり、IPOとはまた違った部分で忙しい可能性はあります。

直前々期(N-2期)

主幹事証券会社の選定・決定(引き受けてもらうため)に伴い、証券会社から要求される資料の作成・提出が多くなっていきます。

締め切りの日付が決まった状態で資料の提出が求められますが、社内における各種データの管理状況によって忙しさが変わってきます。

経理に大きく関係する側面としては、経理財務の体制整備が求められる状況となるため、経理業務の内製化や決算早期化、決算開示との連携も含めた会計システムの導入、内部統制強化への着手など多岐にわたる業務が出てきます。

N-2期末までに管理部門体制を一定程度以上の水準に引き上げていくことが求められ、その中でも経理・財務に関わるフロー整備、資料の作成は多くなることから、一人一人のタスク量が増加します。

直前期(N-1期)

内部管理体制の運用・改善、上場申請書類作成といったボリューミーな業務が多く発生するため、忙しい傾向にあります。

企業にもよりますが、この時点で先の市場変更を見据えたさらなる強化を行うケースもあり、引き続き、採用強化、体制強化に動く場合も多く、忙しい時期です。

申請期(N期)

上場申請を行う期です。

基本的にN-2期からN-1期、申請前後にかけて業務が立て込みます。
CFO(最高財務責任者)などの上場準備に関して責任を負う立場のポジションの場合は特に忙しく、状況によっては激務で苦しい状態が続くこともあります。

IPO準備企業の経理職といっても役割や状況は企業ごとで異なることから、細かい点は転職時に確認する必要があります。

IPO経理の業務一例

上記ではIPO準備のフェーズごとに記載しましたが、経理の業務内容で分解すると以下のようなものです。それぞれ独立しているというよりは、密接に関連する事項ですのでおおむねの分類としてご覧ください。

財務諸表の作成

株主・投資家などのステークホルダーに企業の経営状況を客観的に伝えるため、財務諸表の作成・開示が必要です。

上場後は非上場企業では作成する必要のなかった多数の書類作成が必要となりますが、これに伴い、さまざまな業務フローも変更する必要があり、複雑な書類の作成が必要となることから、体制によってはかなり忙しくなる要因の一つです。

経理業務のフロー整備や内部統制の強化

経理・財務に関わる規程の整備から、規程通り運用できているかのチェックまで確認する必要があります。

また、日常経理から財務諸表の作成、開示などとあわせたシステムの導入なども行う必要がありますが、システムの導入・入れ替えは非常にハードな業務です。通常はシステム導入だけで1人担当を置くべきところ、掛け持ちで担当する必要性があり、ハードな業務となる可能性があります。

監査法人対応

監査法人からのヒアリング、資料の提出などの各種対応やレビューの内容・課題を踏まえた経理部門としての必要な改善対応を行うなど、各種監査に対して対応する必要があります。

上場企業と同等の会計処理水準に引き上げていくために、経理業務のフローの変更など経理が行う業務は膨大と言えます。

証券会社・証券取引所の審査への対応

取引所への上場申請をするにあたって、まずは証券会社の審査を通過しなければなりません。
証券会社の審査は中間審査・最終審査があり、将来的な見通し(事業計画など)に対してチェックを行い、指摘事項が発生した際は対応をする必要があります。

取引所では上場の適否の判断審査が行われますが、指摘事項に対する改善の期間が短いことから場合によっては短期的に多忙になる可能性があります。

IPO準備企業の経理で働く魅力

IPO準備企業は忙しくて仕事が大変な理由を記載してきましたが、そうした現場で働く魅力も当然あります。

キャリアパスの広がり

IPOを経験することで今後のキャリアに広がりが生まれます。

IPO準備に伴う各種経理業務はもちろん、それ以外の他の管理部門も含めた全体を上場企業レベルに押し上げていく過程を経験でき、多彩な経験を積むことができるのが魅力です。

将来管理部門長を目指したいといったケースでは経理だけでなく管理部門全体を理解している必要があることから、IPO準備でさまざまな業務に関わる経験は非常に大きいと言えます。

また、IPO経験のある経理職の方はあまり多くありません。

今回のIPOにおいては中心メンバーでなかったとしても、経験を活かし、別のIPO準備企業で中心メンバーとして活躍し、高いポジションを取っていくこともできるかと思います。

IPO準備企業での経験はキャリアパスという点で大きな財産となります。

実務スキルとヒューマンスキルの向上

IPO準備では、上場企業並みの経理体制が求められ、それをゼロベースから作っていくところに参画するので、必然的に高い実務能力が身に着くと言えるでしょう。

こうした実務的なスキルアップは、上記のとおりキャリアパスの広がりに貢献し、可能性を高めてくれます。

経理実務以外の面でも大きく成長するものがあり、仕組み・フローが整っていない環境で実務を行う上では、状況に応じて試行錯誤しながら業務を進めていく必要があることから、考える力や対応力が高くなります。

経理職に就かれる方は、真面目でテクニカルな実務スキルの向上はしっかり行うことも多いと思います。そのため、作業的な業務が得意な傾向にありますが、臨機応変に現在の課題に合わせて柔軟に動ける方はそこまで多くありません。

変化の激しい時代の中で今後市場で求められる人材は、そうした環境の変化に伴って、随時発生する組織の課題に柔軟に対応できる人材であると考えられます。

例えば、大手企業であってもベンチャー企業のように新規事業に積極的に取り組んだり、ビジネス構造の変革に取り組んだりと、スピード感が求められます。そうした中で、事業に合わせて新たに経理の方針を作り、対応していける人材は需要が高くなるため、ベンチャー企業で試行錯誤しながら作り上げていく経験は大きくプラスに働くものと考えます。

そういった意味でもIPOを目指すベンチャー企業での経験は魅力的であるといえます。

昇給・昇進・年収UPなど待遇上昇が見込める

IPOを目指すベンチャー企業の経理は比較的年収が高い傾向にあり、経理部長やマネージャー以上のポジションであれば1000万円近くになることもあります。

資金調達が順調で余裕のあるベンチャー企業も近年は多くなっており、人材に投資可能な企業が増えていることから、場合によっては大手企業よりも高い年収が得られる可能性があります。

年収UPを狙う方の転職先候補としても検討の余地があります。

また、大手企業よりも上位ポジションが詰まっていないため、上の役職が狙えるチャンスは多くあり、能力・実力次第ではキャリアアップする機会があるのも魅力です。

キャリアパスの広がりとも関連しますが、IPO経験は転職市場において高い評価が得られるため、転職においても待遇UPが期待できます。

IPO準備企業の経理で働くデメリット

IPO準備は忙しいということは説明してきましたが、それ以外にも考慮すべき事項があります。

IPOできずに終わる可能性もある

IPOや将来の会社の成長を期待して転職したとしても、途中で事業が頓挫し、IPOできずに終わってしまうケースもあります。

IPOできなかったとしても、組織を作り上げていく過程での実務経験は評価されますが、IPOできたかどうかの差は大きいです。永遠のN-2期を繰り返し、疲弊する企業も多くありますので、入社時点での求人先の上場確度の見極めも重要です

また、具体的にIPO準備に入っている企業ではなく、これから目指していくといったような企業の場合、経営者がそこまで本気でIPOを目指しているわけではなく、なんとなく口にしているだけといったようなケースも見受けられます。

そうした場合IPO準備に着手すらせずに終わってしまうこともありますので、経営陣も含めてしっかりと企業選びを行っていく必要があります。

当社ではベンチャー企業向けにIPO支援サービスを提供していることから、求人のご紹介だけでなく企業選びのアドバイスなども可能ですので、上場確度の高い企業へ転職するにあたってはお気軽にご相談いただけましたら幸いです。

激務になる可能性

記載してきた通り、IPO準備にあたっては短期間で処理しなければならない業務も多くあり、特にN-2期から申請直後あたりまでは状況に応じて業務量が増加する時期もあります。

そうした中で人員が不足しているなど、体制によっては激務になる可能性もあります。

企業の状況によりけりで一概に言えないところですが、求人先選びにあたってはしっかりと内部の状況まで含めて情報収集を行いたいところです。

IPO準備企業の経理求人を探す

IPO準備企業への転職では求人先の見極めが重要です。

売り手有利な状況だからこそ求人選びが難しい

社会全体が人手不足の傾向にあり、転職動向としては売り手市場が続いていますが、IPO準備企業の経理職も売り手有利な状況が続いています。

資金調達が容易になるなど、起業しやすくなったことや大学発ベンチャーの増加などベンチャー企業の数自体が増加傾向にあるのも求人が増加している要因となっています。

ただ、だからといって良い求人ばかりという事ではなく、玉石混交となっており、その分求人選びの難易度は高くなっていると言えます。

上場確度の高さやリスクの度合いの情報収集においては転職エージェント相談も有効

IPO準備企業の経理求人を探す際は、基本的に転職エージェントサービスを利用するのがおすすめです。

理由としては、上記で記載した通り、求人の数自体が多く、マッチする求人を探すのが難しくなっていることや、IPO準備に伴う重要ポジションの採用となると基本的に表立って求人の募集をするケースが少なく、エージェントに採用を依頼するケースが多いということがあげられます。

また、ベンチャー企業の場合、公開情報が少ないケースも多いことから、情報収集という側面でもエージェントなどを経由して動向を探り、比較検討していくことがミスマッチを避けるのに有効であると考えます。

加えて、上場の確度の高さなど、求人の目利きも非常に重要です。

絶対的にIPOできると断言することは難しいことですが、確度の高い求人のご案内や求人を選ぶ際のポイントなどのアドバイスなどは可能ですので、求人や情報をお求めの方はぜひご相談いただければと思います。

履歴書や職務経歴書のサポートなども行っておりますので、まずは気軽にお問合せください。

まとめ:激務かどうかは求人先次第。働くことで得られるモノが大きい可能性もある

IPO準備を進めていくにあたって経理が関わる業務内容は多くあり、役割はとても大きいことから、基本的に忙しい傾向にあると言えます。

ただ、その度合いは企業の状況によるところが大きいため、転職にあたっては内部の状況も含めてしっかりと情報収集をしっかり行うことが重要です。

また、デメリットばかりではなく、IPO準備企業の経理として培った経験は希少であり、転職市場における価値も向上することから将来的なキャリアアップ、待遇向上などのキャリアや年収面でのメリットも大きいと言えます。

IPOに興味はあるが転職するかどうか迷っているという方もいらっしゃるかと思いますので、具体的に今すぐの転職を考えているわけではないという方もまずはBridge Agentにお気軽にご相談いただければと思います

この記事の監修者

ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太

新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。

エグゼクティブコンサルタント 仁木 正太

 

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Bridge Agent編集部

Bridge Agent(ブリッジエージェント)は、IPO支援や経営管理コンサルティングサービスを展開するブリッジコンサルティンググループ株式会社が運営する公認会計士・弁護士などの士業やCFO、経理・財務、人事、法務などの管理部門職の転職支援を行う転職エージェントです。経験豊富なコンサルタントがあなたにマッチする求人の提案やキャリアの相談をさせていただきます。

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