経理職としてのステップアップの1つとして、大手メーカーへの転職が挙げられます。転職に関する情報を調べ、「本当に大手メーカーへの転職が年収アップにつながるのか」「具体的な年収はどれくらいなのか」といった疑問を抱えている方もいるでしょう。
そこで本記事では、大手メーカーへの転職が年収アップにつながる理由や年収の目安、年収アップのために意識すべきポイントを解説します。転職を検討している場合は、ぜひ「Bridge Agent」にご相談ください。
士業・管理部門に特化したコンサルタントが、あなたの転職活動を全力でサポートいたします。もちろん、キャリア相談だけでも歓迎です。まずはご自身のキャリアについて一緒に考えさせていただく時間をお取りいただければ幸いです。
目次
大手メーカーへの転職が年収アップにつながる理由
大手メーカーは組織が大きく、多様な役職やキャリアパスが存在します。そのため、昇進やキャリアアップのチャンスが多く、それに伴って給与が増加する可能性があります。役職に就くことで、基本給に加えて管理職手当などの追加報酬を得られる場合もあります。
また、大手メーカーは組織の安定性から福利厚生が充実している傾向があります。グローバルに展開している大手メーカーでは、企業全体の収益が増加していることが多く、その分社員に還元されやすい環境が整っています。
大手メーカーの福利厚生として人気があるのは、企業が住宅ローンや家賃を一部負担する住宅手当や、社員食堂などを設けている企業ではランチ代を一部負担するなどの制度です。
これにより、本来従業員が負担するはずの出費を企業が負担してくれるため、大手メーカーへの転職によって実質的に年収がアップすることになります。
大手メーカーの経理職の年収目安
厚生労働省のデータを基に、経理職全体の平均年収と大手メーカーの経理職の平均年収を解説します。大手メーカーについては、業種別の比較も行いますので参考にしてください。
経理職全体の平均年収
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査*」によれば、「会計事務従事者」(企業規模計10人以上)の平均年収は以下の通りです。
- 「きまって支給する現金給与額」(月収)が32万3,500円
- 「年間賞与その他特別給与額」(ボーナス)が96万3,500円
これにより、年収にすると484万5,500円であることがわかります。
*調査概要
【対象】日本全国の事業所(日本標準産業分類にもとづく16大産業)
【調査方法】調査票の郵送・回収
【実施期間】2022年7月
【調査対象数】78,589事業所(有効回答数:55,427事業所 有効回答率70.5%)
(参照:e-stat 政府統計の総合窓口「令和5年賃金構造基本統計調査」会計事務従事者)
※「きまって支給する現金給与額×12か月分」と「年間賞与その他特別給与額」を足して算出
大手メーカーの経理職の平均年収
上記の調査で、「会計事務従事者」のうち、「企業規模計1,000人以上」の項目では、平均年収は以下の通りです。
- 「きまって支給する現金給与額」(月収)が35万9,500円
- 「年間賞与その他特別給与額」(ボーナス)が133万5,700円
これにより、年収にすると564万9,700円であることがわかります。
大手メーカーの経理職として転職するメリット
大手メーカーの経理職として転職するメリットは、以下の3点です。
- 待遇面が充実している
- 経理としてレベルアップできる
- 組織の安定性がある
それぞれのメリットについて解説します。
待遇面が充実している
大手メーカーの経理職として転職するメリットは、待遇面が充実していることです。「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、経理職全体の平均年収に比べて、大手メーカーの経理職の平均年収は約80万円高くなっています。
さらに、社員のスキル向上やキャリア発展のための研修・教育プログラムにも力を入れているため、サポート体制が整っています。
また、年収アップだけでなく、中長期的なキャリア形成にも良い影響を与えるでしょう。
経理としてレベルアップできる
大手メーカーの経理職として転職することで、経理としてのスキルアップが可能です。特に上場企業では、四半期ごとの決算報告や、連結決算など、複雑な経理業務に携わる機会が多くなります。
また業種にもよりますが、大手メーカーの経理職は、資金調達に関わるケースもあります。たとえば、株式発行による資金調達など、中小企業ではあまり経験できない業務を担当することができます。経理職として非常に貴重な業務を経験でき、転職市場で高く評価されるポイントです。
組織の安定性がある
大手メーカーは事業規模と市場でのポジショニングにより、中小企業に比べて経営基盤が安定しています。不況時でも業務の継続性が保たれやすく、倒産リスクが低いのが特徴です。安定した環境を求める方にとって、大手メーカーへの転職は大きなメリットとなります。
大手メーカーの経理職として転職するデメリット
大手メーカーの経理職として転職するデメリットは、以下の3点です。
- 業務内容が限定される可能性がある
- 裁量が大きくない
- 全国転勤の可能性がある
それぞれのデメリットについて解説します。
業務内容が限定される可能性がある
大手メーカーの経理部門は分業体制が一般的で、特定の業務に専念するケースが多くあります。そのため、スキルセットが特定の業務に偏る可能性があり、経理職としての総合力を高めるのが難しいことがあります。
しかし、四半期決算や連結決算などの高度な業務を経験する機会では専門性を深められる面もあるため、一概にはデメリットとも言えないかもしれません。
裁量が大きくない
一般的に大手メーカーでは、決定権が上層部に集中しており、経理職においても個々の裁量が限られている場合がほとんどです。
多層的な承認プロセスを経るため、業務の進行が遅れることや、自分のアイデアを直接実行に移すことが難しい場合があります。自分で何か新しいことを始めたいなど、チャレンジ精神旺盛な方にとっては、入社後に理想とのギャップに悩む可能性があります。
全国転勤の可能性がある
全国転勤の可能性があるのも、大手メーカーの経理職として転職するデメリットです。多くの大手メーカーでは全国各地に拠点を持っているため、全国転勤を求められることがあります。
家庭を持つ場合や地域に根ざした生活を望んでいる場合、単身赴任や引っ越しを繰り返すことは大きな負担になるかもしれません。自分のライフスタイルを振り返り、全国転勤に対応できるかどうかは必ず検討しましょう。
経理職が年収アップを目指すなら「資格取得」「スキルの向上」「高年収企業への転職」
比較的、年収アップが期待できる大手メーカーへの転職ですが、それ以外でも年収をアップする方法はあります。
- 専門的な知識を証明できる資格を取得する
- スキルの向上
- 高年収の企業へ転職する
以下、それぞれのポイントを解説します。
専門的な知識を証明できる資格を取得する
経理職が年収アップを目指す際は、専門的な知識を証明できる資格を取得するのがおすすめです。公認会計士や税理士などの資格を取得し、資格手当を受けることで年収アップを目指せます。
経理職として年収を高める方法とは少し異なりますが、公認会計士や税理士は、独立開業の道もあります。単なる年収アップだけでなく、キャリアの選択肢を増やす意味でも、資格取得は有効です。
以下、年収アップを目指す経理職におすすめの資格を解説します。
日商簿記検定 2級以上
簿記(日商簿記検定)は、日本商工会議所が主催する資格試験です。会計および経理の知識を評価するもので、企業の財務管理や個人の資産管理に役立つスキルを習得できます。経理職であれば、まず取得を検討したい資格です。
簿記は大きく分けて1級〜3級まであり、2級以上が経理職で役に立つレベルです。資格手当や転職時などのアピールを通して、年収アップにつながります。
語学力関連の資格
大手メーカーであれば、海外子会社とのやり取りもあるため、語学力関連の資格もおすすめです。主にビジネスや日常生活における英語のコミュニケーション能力を測定するTOEICのほか、ビジネス言語として重要性が高いのは中国語です。中国語の資格としては、HSK(漢語水平考試)や中国語検定(中検)、TECC(中国語コミュニケーション能力試験)などが知られています。
公認会計士
公認会計士は、金融庁の認可を受けた日本公認会計士協会が管理している国家資格です。会計・監査の専門性を証明するもので、国内の資格でも最難関の1つとされています。
公認会計士を取得していると、企業の財務諸表監査や税務コンサルティング、経営アドバイザリーなどさまざま業務に従事できます。他の資格に比べて専門性が高く、大きな年収アップが期待できるでしょう。
税理士
税理士は、税務に関する専門的な知識を持ち、税務申告や税務相談を行える国家資格です。なお前述の公認会計士試験に合格し、実務補習を経て公認会計士として登録すれば、そのまま税理士として登録もできます。
公認会計士と同様、税理士も高い専門性を持つ資格で、年収アップが期待できるでしょう。企業でのキャリアアップとは関係ありませんが、独立して税理士事務所を開業し、大きく年収を伸ばす方法もあります。
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定は、大阪商工会議所が主催する資格試験で、企業の経営分析に必要な知識やスキルを評価するものです。財務諸表の読み取りや経営指標の分析を通じて、企業の財務状況や経営成果を把握するための知識を習得できます。
検定資格を持つことで、財務・経営企画部門やコンサルティング業界など、幅広い職種でのチャンスがあります。手当として年収アップにつながるだけでなく、転職の選択肢が広がるという意味でもおすすめの資格です。
FASS検定
FASS検定(Financial Accounting Skill Standard)は、日本の経済産業省が後援する資格試験で、企業の経理・財務担当者のスキルを評価するためのものです。経理・財務の実務に直結したスキルを評価するため、キャリアアップを目指す方にとって有用な資格です。
検定で習得した知識とスキルを実務に活用することで、業務の効率化が図れます。個人あるいは組織全体の生産性が向上し、成果が認められることで年収アップにつながるかもしれません。
スキルの向上
経理以外の管理部門(人事、総務、労務など)の経験や知識を持ち、組織体制の構築に幅広く関わることができる方は、マネジメント層へのキャリアアップをしながらより高い年収を目指せます。
高年収の企業へ転職する
年収アップを目指す場合、高年収の企業へ転職するのも重要なポイントです。経理職は、基本的にはその企業の平均年収に依存するため、リサーチを徹底し、高年収の企業へ転職するのが一番の近道です。
高年収を狙える企業としておすすめなのが、ベンチャー企業です。大手メーカーに比べて上位のポジションに就きやすく、年収800万~1,000万円も視野に入ります。経理が年収800万円以上を目指す方法について詳しくは、以下の記事も参照してください。
大手メーカーの経理で年収アップを目指している方へのアドバイス
大手メーカーは、組織の安定性と待遇面が充実している点が魅力です。転職するだけでも年収アップが期待できるでしょう。
大手メーカーで着実にステップアップするためには、資格取得などを通して専門性を深めていくのが重要です。本記事で紹介した資格で、関心があるものがあれば、取得を検討してみてください。
大手メーカーの経理職に転職する場合は、転職エージェントで情報を集めるのがおすすめです。非公開求人を紹介してもらえるだけでなく、キャリア相談などさまざまなサポートを受けられます。経理職で転職を検討している場合は、ハイクラス人材向け転職エージェントサービス「Bridge Agent」までお気軽にご相談ください。
士業・管理部門に特化した、実績と経験豊富なコンサルタントが転職活動をサポートさせていただきます。転職支援登録・キャリア相談は以下ボタンよりお申込みいただけますと幸いです。
(所要時間:面談予約完了まで約1分)
この記事の監修者
公認会計士A
保有資格:公認会計士、証券外務員(第一種・第二種)、簿記1級など。
大学在学中に公認会計士試験に合格。その後、監査法人や投資銀行を経て、現在は投資ファンドでPE投資に従事。