転職相談をする中で、投資ファンドへの転職に興味があるという方とお会いする機会が多くあります。基本的にキャピタリストなどのフロント職に興味をお持ちの方が多い傾向にあるのですが、中にはファンド経理などのバックオフィスポジションへの転職を希望されるケースもあります。
既に金融業界で働いている方が興味を持つケースばかりでなく、監査法人に所属する公認会計士や一般事業会社の経理職など、そのバックボーンはさまざまです。
ただ、ファンド経理の転職に関する情報はなかなかネット上などでも公開されておらず、情報収集が難しいというお話も聞きます。
そこで、このページでは、ファンド経理への転職に少しでも興味をお持ちの方向けに、仕事内容やキャリアパス、転職するメリット・デメリットについて解説していきたいと思います。
Bridge AgentではPEファンド(プライベート・エクイティファンド)やVC(ベンチャーキャピタル)などの投資ファンドへの転職支援を行っております。このページでは投資ファンドのバックオフィスを中心とした記載ですが、フロント側のポジションの転職支援も行っておりますので、投資ファンド領域の情報収集をされている方は気軽にご相談いただければと思います。
目次
ファンド経理の仕事内容
ファンド経理とは具体的にどのような仕事内容なのでしょうか?
一般事業会社の経理とそう変わらない部分も多くありますが、一般的な会社とは事業構造が異なるため、ファンド特有の業務も発生します。
※注意点として、ファンドの仕組みや経理の業務範囲はファンドごとで異なるため、あくまで1つの例としてご覧いただければと思います。個々のファンドごとの詳細な業務内容については、求人案内時に説明させていただきます。
入出金管理・キャッシュフロー・費用分析・収益計算
ファンドの事業の流れを大まかに記載すると、
①投資家から資金を調達
②株式や債券などの金融資産で一定期間運用
③価値が上がったところで新たな買い手に売却をして資金を回収
④収益を投資家に分配する
といった流れです。
一連の各動きの中でお金の出入りが多くなることから、入出金管理はとても重要な業務です。ファンドに関する費用の分析も含めて、お金の動きをしっかり分析することが大切です。
また、入出金管理をするとともに、会計システムへの入力から月次・四半期資料の作成などを行います。投資家への分配金はファンドの収益が元になりますので、収益計算も重要な業務の1つです。
決算業務
事業会社同様に、ファンドも決算を行います。
日次の通常経理業務から月次業務、年次決算業務を含めて事業会社と同じような経理業務も多くあります。
投資家向けのレポーティングに関わる業務
決算に関連して、投資家向けのレポーティング資料の作成業務が発生するほか、ファンドによっては個別の質問対応などを行う必要があります。
顧客と直接やりとりをする可能性がある点で一般的な経理業務とは違いがあると言えます。
監査対応
ファンドの運用成績などを信頼し、投資判断ができるよう独立した第三者による会計監査を受ける場合があります。ファンドのスキームにより法定監査が必要かどうかが異なる他、任意監査を受ける場合もあり、そうした監査対応も業務の1つです。
ファンド経理へ転職するメリット・デメリット
ファンド経理へ転職するメリット・デメリットは以下のようなものがあげられます。
年収は高いがややハード
ファンド経理の求人に興味を持つきっかけの1つが、その年収の高さにあります。
募集ポジションの職位などによるところもありますが、年収700万円~1200万円前後のレンジでの募集が比較的多くなっており、経理職としてはかなり年収は高めです。
年収が上がらずに悩む経理職の方は多いので、そういった意味ではファンド経理は魅力的であるといえます。
ただ、年収が高い背景として、求められる要件が高いことや利益を追い求める姿勢が厳しいため、業務自体もややハードな傾向にあるということがあげられます。精神的な重圧も一般的な経理と比べれば高い傾向です。
近年は労働環境が整備されつつありますし、ファンドによっても大きく違いがあるため一概に厳しい環境であるとは限らないのですが、一般事業会社の経理からの転職を検討する場合はギャップを感じるケースもあるので注意しておいた方がいいでしょう。
高い専門性が身につく
ファンド特有の会計基準もあり、専門的な経理実務が経験できます。
ファンドの全体像の把握と深い理解が求められますが、ファンドの仕組み自体がとても複雑であることから、業界に対する知見も含めて高い専門性が身につきます。
ただ、将来的にファンド・金融以外の領域へのキャリアも考えている場合は、その専門性の高さが生かせない可能性があり、キャリアの汎用性という意味では低いかもしれません。
年収が高く、メリットも大きいのですが、キャリアの考え方によっては必ずしも良いことばかりではないため、ファンドへの転職を検討するにあたっては、一度ご相談いただければと思います。
投資ファンドへの転職で押さえておきたい注意点
投資ファンドと言ってもファンドごとに投資スタイルや組織構成などは大きく異なります。
そのため、転職にあたっては最低限押さえておきたい事項もあります。
少数精鋭の組織であること
PEファンドやVCを始めとして、投資ファンドの多くは少数精鋭で組織されています。
そのため、採用する側もされる側もカルチャーフィットするかどうかは慎重に検討すべき事項です。
また、少数精鋭の組織にありがちな問題として、上層部がいつまでも居座り続けるため、世代交代が進まないといった問題が起きているケースがあります。
年収レンジがそもそも高い業界ではありますが、職位によって給与に大きく差がでますので、ファンドによっては不満を抱える若手は一定数いらっしゃいます。
ただ、少数精鋭な部分はデメリットばかりでなく、たとえばPEファンドなどでは人を育てる文化が根付いているところも多いため、カルチャーマッチすれば成長しやすい場でもあります。
このあたりはファンドによりけりなので、しっかりとした情報収集を行い、ミスマッチを減らしていきましょう。
運営母体や資本
投資ファンドと一口に書いてきましたが、ファンドによって投資対象や投資金額などが大きく異なります。
銀行系のファンドなのか、大手事業会社の資本が入ったファンドなのか、あるいは独立系のファンドなのか、運営母体によっても内情は大きく異なってきます。
母体によって投資に対する意向は大きく異なりますし、投資対象が異なれば当然経理処理も異なってきます。
ファンドの種類
また、ファンドの種類に関しても転職活動を始める前に押さえておくべき事項と言えるでしょう。ここでは主なものをご案内します。
バイアウトファンド
老舗の成熟企業や企業の特定の一事業部門などが投資対象です。議決権の過半数を獲得し、会社の支配権を確保して経営に踏み込むことで企業価値の向上を図り、価値が上がったところで株式を転売して利益を上げるファンドです。
投資家から資金を集める他、投資効率の観点から借入金を活用した企業買収を行うケースが多くなっています。
ベンチャーキャピタル
非上場のスタートアップベンチャーなどをターゲットに投資を行うファンドです。
出口としてはIPOを目指すケースの他、M&Aにより利益を得るスタイルです。
不動産投資ファンド
不動産投資ファンドは、投資家から集めた資金で不動産を運用し、得られた収益を投資家に分配します。
不動産業界での経験や知識が求められるケースが多くなっています。
アクティビストファンド(アクティビティファンド)
一定数の株式を保有することで投資先企業の経営に対して影響を及ぼし、あれこれ提言することで企業価値を高めて売り抜けていく投資ファンドです。
ニュースなどでよく耳にする「物言う株主」がこれに該当します。
ファンドと言ってもさまざまですので、それによって求められるものも変わってきます。
ファンド経理のキャリアパス
ファンド経理として経験を積んだ後は、また別のファンドの経理に携わるケースが多い印象です。後は、近接する金融領域でのキャリアが多くなるでしょう。
専門的な領域でキャリアを築いていきたいとお考えであれば問題はありませんが、ここまでに記載したように、ファンド・金融領域以外のキャリアを検討するケースでは経験が生かしにくいこともあるため、注意が必要です。
そのため、ファンド経理に興味はあるが先のキャリアまで考えると少し迷うという方もいらっしゃるかと思います。
ファンドへ転職する前段階で、一度広い視点でキャリアについて考えておいたほうが良い場合もありますので、キャリアの相談をご希望の方は気軽にご登録ください。
ファンドや金融業界未経験でも転職は可能
ファンド経理の求人へ応募するにあたっては、必ずしも金融・ファンド領域での業務経験が求められるとは限りません。
一般事業会社の経理経験や監査法人での監査業務経験(一般事業会社の監査でも可)、税理士資格者として税理士法人での実務経験などがあれば可とするケースも多くあります。
語学力に関しては、求人票に必ずしも必須ではない、という記載がある場合でも、まったくできない場合はマイナス要因となるケースが多くなっています。実質的にビジネスレベルの英語力が必要とされる求人も多いため、応募するファンドによっては注意が必要です。
これらはあくまで傾向の話であり、採用要件は状況にもよってくるため、参考としてご覧いただければと思います。
現在募集中のファンド経理の求人の詳細な募集要件は求人案内の際に説明させていただきます。
ファンド経理の求人は売り手有利?
現在多くの職種で人手が不足しており、経理職に関してもスタートアップベンチャーから大手上場企業まで含めて多くの求人募集がある状況です。
ただ、ファンド経理に関してはもともとそこまで求人自体が多いわけではありませんので、どちらかというと狭き門です。
昔と比べると転職しやすくなったと感じますが、いずれにせよ求められる要件は高い傾向にあり、採用のハードルは高めですので、しっかりと準備を整えて転職活動を行っていく必要があります。
公認会計士の採用は比較的多い
公認会計士でなければならないというわけではありませんが、公認会計士あるいは税理士資格者であれば尚良いとする求人先は結構多いと感じています。
特に公認会計士は金融・ファンド領域の監査経験がなくても問題なく応募できるケースが多くあり、実務に対するキャッチアップが早いため、どちらかというと採用されやすい傾向にあるように思います。
投資ファンドへの転職に興味をお持ちの公認会計士の方は比較的多いのですが、キャピタリストなどの職種ではファイナンスの経験が必須となり、なかなか転職することは難しい場合が多いため、バックオフィスポジションでのキャリアをご案内すると興味を持たれるケースもあります。
公認会計士でファンドへの転職に興味がある方は、ファンド経理も視野に入れてみるのも良いでしょう。
Bridge Agentでは公認会計士の転職支援も得意としておりますので、ファンドも含めた幅広いキャリアの相談が可能です。
ファンド経理の求人情報
投資ファンドはポジションに関わらず非公開で求人募集を行うケースが多くなっています。
そのため、ファンド経理の求人をお探しの方は、まずはBridge Agentへご登録いただければと思います。
本ページでも記載したとおり、ファンドは少数精鋭で組織されており、スキルマッチするかどうかのみならず、カルチャーマッチするかも重要な要素となってきます。
Bridge Agentでは単なる求人の案内やキャリアの相談だけでなく、ミスマッチの防止という観点からしっかりとした情報提供も可能となっております。
また、投資ファンドだけでなく、一般事業会社の経理・財務・会計に係わるポジションの求人のご案内や会計・財務に関するコンサルティングファームへの転職支援も行っております。
ファンドも含めて広く転職先を探っていきたいとお考えの方もいらっしゃるかと思いますので、そういった方もBridge Agentをご活用いただければと思います。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。