これまでは、希望の転職先として、中小監査法人を選ぶ方はあまり多くありませんでした。
しかし、最近では多様な働き方が実現できることや独立を見据えた将来のキャリアという観点から興味を持つ方が増加しています。
このページでは、中小監査法人へ転職するメリットを、大手監査法人で働く場合と比較しながら解説していきます。中小監査法人への転職を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
中小監査法人の採用マーケットは超売り手市場
ここ数年、中小監査法人がクライアントシェアを大きく伸ばしており、存在感が高まっています。
クライアントが増加すれば当然人手が必要となることから、中小監査法人の採用状況は活発です。
即戦力を求める傾向にあり、特にBIG4監査法人などの大手監査法人でしっかりと経験を積んでいる方々に対する採用意識が高くなっています。
そのため、大手監査法人からの転職ということであれば、転職すること自体は比較的容易といえます。ただ、求人の選択肢が豊富にあると、どの監査法人が自分に合っているか迷うこともあるでしょう。
Bridge Agentでは公認会計士の転職支援を長年行ってきたコンサルタントが在籍しているため、各監査法人の特徴を押さえた求人の紹介が可能です。気軽にご相談ください。
大手監査法人との違いから中小監査法人の魅力を探る
監査法人の規模の違いによって働き方やキャリアにどのような違いが生まれてくるのでしょうか? それぞれの違いから中小監査法人で働くメリットについて探っていきましょう。
忙しさが違う?ワークライフバランスの実現なら中小監査法人
「監査法人は激務」だと思っている方はとても多いのですが、そうとも限りません。
公認会計士試験合格後、近年はほとんどの方がBIG4監査法人へと就職します。ご存じのとおり、BIG4監査法人は忙しく、特に繁忙期の働き方に関しては厳しいものがあるといえるでしょう。
こうしたBIG4でのイメージがあるため、監査法人はすべて激務で忙しいと思い込んでいる方もいらっしゃいます。
ただ、実際はそのようなことはなく、BIG4監査法人以外であれば、ワークライフバランスが実現できるところもあります。
労働時間はもちろんですが、中小監査法人では仕事の進め方に一定の裁量が認められるケースもあるため、柔軟な働き方が実現できる場合もあります。
また、BIG4では内部資料の作成に追われるなど、面倒な書類化作業が多く発生しがちです。中小監査法人よりも作業量は圧倒的に多いことから、必然的に労働時間にも差がでてきます。
そのため、ワークライフバランス重視の転職をする場合において、監査の仕事がそれほど嫌いでないのであれば、中小監査法人に目を向けてみるのも一つの手であると考えます。
職場のスタッフやクライアントとの距離が中小監査法人の方が近い
中小監査法人では、大手監査法人と比べて、マネジャーやパートナーなど上司との距離感が近いのが特徴です。
そのため、職場によっては個人の意見や事情を考慮してくれることがあり、個々に合わせた働きやすさが実現しやすいことがあります。
相性の良い監査法人へ転職することができれば、アットホームさが感じられ、精神的な働きやすさも得られます。長期的なキャリア形成もしやすいでしょう。
また、クライアントとの距離が近いのも大きな特徴です。
大手監査法人を辞めたいと思う理由として、「クライアントの顔が見えない」「反応が見えない」といったものがありますが、中小監査法人ではクライアントとの距離が近いため、相手の反応をダイレクトに感じながら仕事を進めていくことができます。
人脈形成という観点からも、この距離の近さはメリットですので、将来独立を目指すケースでも利点があると言えるでしょう。
副業が認められる場合が多い
BIG4監査法人で副業を行うことは実質的に困難かと思いますが、中小監査法人では副業ができるケースが多くなっています。
独立も含めて新しいことにチャレンジしたいと考えた際に、まずは副業レベルで取り組んで可能性を探っていきたいと思うこともあるでしょう。
そういった場合、いきなり独立するのではなく、慣れた監査業務をやりながら副業で新しい業務に取り組むことで、自身のスキルやキャリアを広げていくことも可能です。
先ほど記載したとおり、人脈形成などでもメリットがあるため、独立を考える際は中小監査法人を間に挟むのも悪くないと考えます。
法人にもよりますが、自身で会計事務所を持ちながら従事できる監査法人もあるため、うまく合致するところが見つかれば安定した基盤を作りながら独立を目指していくことができるかもしれません。
年収はBIG4監査法人に見劣りしない
中小監査法人は給与が低い、と思っている方も多いです。
ただ、これもそうとは限りません。
近年の傾向としては、むしろ中小監査法人の方が年収自体は高い場合もあり、満足度が高まるケースもあります。
中小監査法人だからといって監査の質が低いということはなく、むしろ、質を向上させたいというと考えているため、優秀な人材に来てもらうためにBIG4監査法人と同等レベルの給与水準にまで引き上げているところが多いと感じます。
最終的に得られる年収は残業も含めた働き方によるところもありますので一概には言えない部分はあるものの、「中小監査法人=給与が低い」ということではないことを認識しておきましょう。
パートナーを目指しやすい
中小監査法人では、BIG4監査法人よりも上位ポジションが目指しやすいため、パートナーを目指すという選択肢も現実的に考えることができます。
監査法人でキャリアを構築していきたいとお考えの方は一定数いらっしゃるものの、BIG4監査法人ではそれが難しくなってしまうことは多いです。
中小監査法人では、30代などの若い公認会計士がパートナーになる事例も多数あるため、監査法人で上層部を狙っていきたい方にもおすすめです。
税務やコンサルなど広く業務に関与できる場合がある
中小監査法人は、クライアントの規模がそれほど大きくない場合が多いため、担当業務領域が広くなる傾向にあり、さまざまなことが経験できます。
税務についての知見が求められるケースが多いため、税務スキルが身につくのも特徴です。税務実務に関しては監査法人とは別に税理士法人を設立して対応していますが、そちらの税務案件などへの関与が可能な法人もあります。このような環境では、監査だけでなく税務を含めた幅広い知識を身につけることができます。
また、先ほど記載したように、個人で会計事務所を持って監査法人で働いている方も多いため、所長も含めた先輩の会計事務所で受けている税務案件を手伝うことで、税務のスキルをあげていくことができる場合もあります。
各法人によるところはありますが、やる気があればさまざまなことに関われる可能性があり、監査以外の業務経験を積みたいと考えている方にとっては魅力的だといえます。
中小監査法人への転職で注意すべきこと
中小監査法人へ転職するメリットについて記載してきましたが、注意しなければならないこともあります。
中小監査法人選びは「質」に注意
すべての中小監査法人の環境が良いわけではありません。人手が足りず、業務手順も整っていない激務な環境の監査法人も当然あります。
監査の質の点でもおすすめとは言えないところもあります。
BIG4監査法人でも各法人ごとに違いはありますが、中小監査法人はそれ以上に各社ごとで内情・状況が大きく異なります。
事前にしっかりと情報収集を行っておく必要があります。
教育・研修制度は大手監査法人の方が整っている
監査実務を体系的に学ぶにあたっては、大手監査法人で用意されている研修の方が充実していると考えられます。
中小監査法人の場合は、OJT方式のいわゆる現場で覚えるスタイルの教育であることが多いため、教育してくれる担当者次第という側面も強くなります。
どちらが良い悪いとは断定できませんが、確かなスキルを身につけるにあたっては体系立てた教育や環境が重要だと思いますので、基本的にはBIG4監査法人で実務を学んでおいた方がいいと考えます。
中小監査法人側も、BIG4監査法人で経験を積んでいる方の転職を歓迎する傾向にありますので、中小監査法人で働く魅力を最大化する意味でも、特別な事情がない限りはBIG4監査法人で一定の経験を積んだ後に中小監査法人へ転職するのが良いでしょう。
海外志向の方には中小監査法人はマッチしにくい傾向
BIG4監査法人と異なり、海外法人で働く機会というのはほとんどないため、海外志向がある方には合わない可能性があります。海外提携先がない中小監査法人が多いからです。
もし、BIG4監査法人以外で海外赴任の希望がある場合は、準大手監査法人にカテゴライズされる法人を見る必要があるでしょう。
最新の情報が手に入りにくい
監査にかかわる最新の情報やテクノロジーを活用した最新の実務に関する情報は、BIG4の方が充実しています。
中小監査法人のレベルが低いというわけではありませんが、やはり情報は大手の方が集まりやすい傾向があります。監査に関わる高度な案件や最新の情報に触れたいと考える方にとっては、中小監査法人への転職にはデメリットがあるかもしれません。
制度化されていない福利厚生などがある
中小監査法人は個々人に合わせて柔軟に対応してくれる場合もありますが、その方針が明確にされていないことがよくあります。法人として最低限整えるべき制度はありますが、他にも利点がある場合、情報を外部から得にくいこともあります。
「働きやすい環境であるという話は聞くが、明文化されていないため絶対的なものではない」という不安を捨てきれないケースもあります。
情報の入手が難しい傾向にある中小監査法人への転職をお考えの際は、当社を含む転職エージェントサービスを利用して情報収集を行うことが賢明です。
中小監査法人からの転職先
中小監査法人で経験を積んだ後、再び転職を考えることもあると思います。
転職先の一例として、事業会社の経理への転職がよく見られます。あるいは、純粋な転職とは言えないかもしれませんが、監査法人のグループ内にある税理士法人やFASなどのコンサルティング会社へ転職(異動)もあります
そのほか、IPO監査を主軸に行っている監査法人であれば、IPO準備企業やスタートアップベンチャーへの転職というケースもあります。
転職以外のキャリアとしては、独立を目指すケースも多いです。近年監査法人の数が増加傾向にあることからも分かりますが、監査法人を設立するパターンの独立も増えています。
中小監査法人は長期的な就業を希望する方から独立を目指す方まで、さまざまな志向性にマッチする転職先です。
将来的な選択肢も広がるため、注目の転職先の1つと言えます。
ただし、年齢によっては実現することが困難な転職先もありますので、先のキャリアも見越した転職を考えたいという方は個別にご相談いただければと思います。
中小監査法人の求人を探す際のポイント
各監査法人のホームページでも求人募集をしているため、自力で求人を探して応募することもできます。
ただし、本ページで記載してきたとおり、希望を叶える転職を実現するためには各監査法人の内情までしっかりとした情報収集を行う必要があります。
また、行政処分歴の有無や抱えるクライアントの属性などもわかる範囲で確認しておいた方がよいでしょう。
問題のあるクライアントを多数抱えている監査法人に勤務し、何か問題が起こったりするとキャリア的にマイナスになりかねません。
そういった法人は、仮にワークライフバランスなどの諸条件がよさそうに見えても避けた方がいい転職先な可能性があります。中小監査法人に対して業務改善命令が出される事例も増えておりますので、監査の質やクライアントまで含めて総合的な判断をしていくようにしましょう。
中小監査法人はおすすめの転職先ではありますが、求人選びを間違えないようにご注意ください。
Bridge Agentでも中小監査法人への転職支援を行っております。いつでもご相談いただければと思います。
ワークライフバランス志向と独立志向の公認会計士に中小監査法人はおすすめ
中小監査法人で働くメリットは、多様な働き方が実現できる点と幅広い業務に携わることができる点です。
ワークライフバランスを実現したいとお考えの公認会計士の方は、ぜひ中小監査法人も転職先候補に入れてみてください。
また、独立志向のある公認会計士も多くいらっしゃいますが、人脈形成や経験値を高めるにあたっても良い就業先です。
一部の監査法人では副業を認めているところもあるため、経験を積むという意味で中小監査法人を視野に入れてみるのも良いでしょう。
当社では公認会計士向けの副業や独立公認会計士向けの案件紹介も行っています。
独立を目指す方向けのアドバイスも可能なことから、中小監査法人に限らず、将来の独立に向けてのキャリアを模索しているケースでもご相談いただければと思います。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。