経理部門の課長(マネジャー)・係長など、中間管理職の方からの転職相談が近年は増加傾向にあります。
そうした方々の中には、安定した大手企業からベンチャー企業への転職を決断される方もいらっしゃいます。一般的に、経理として働く方々はどちらかと言えば安定志向が強く、ベンチャー企業へ転職する例はこれまでそう多くはありませんでしたが、近年は少しずつ事情が変わってきているように感じます。
このページでは、転職を検討する経理管理職の方が増加した背景を説明するとともに、ベンチャー企業という選択肢を選ぶ理由や働くメリット・デメリット、求められる役割について解説していきたいと思います。
当社では上場企業やベンチャー企業向けに経営管理に関するコンサルティングやIPO支援サービスを提供しており、幅広い企業とのつながりがあります。ベンチャー企業はもちろん上場企業も含めて広く求人の紹介が可能ですので、ベンチャー企業の求人のご案内はもちろん双方の特徴や違いを踏まえた情報提供をご希望の方はBridge Agentにお気軽にご相談ください。
目次
30代・40代の管理職クラスの転職が増えた背景
はじめに、なぜ転職する管理職クラスの経理職が増加したのか、その背景について見ておきたいと思います。
転職することが当たり前の時代になるなど“価値観”が変化
転職することが当たり前の時代となり、働くことに対する価値観が変わってきていることが要因の1つとしてあげられます。
また、近年は実力主義の傾向が強まっており、スキルや経験値の高さが求められる時代となっていることから、将来的なリスクを考え、現職にとどまってもスキルアップをしていくことが難しいと判断して離職するケースもあります。
これまでは1社で長く務めることが美徳とされ、それが評価対象でもありましたが、こうした傾向が弱まり、能力を高めていく方向へとシフトしています。
こうしたスキルアップの必要性を感じた転職は役職が課長一歩手前の30代の管理職候補の方に多い傾向です。
経理部門は上位のマネジメントポジションが空かず、大手からベンチャーへ転職するケースも
近年、大手企業から中小企業・ベンチャー企業へ転職する事例が見られます。
その要因として、大手企業では上位の管理職ポジションが詰まっており、昇格が見込めない、難しいという状況が増えているということです。
役職・階級が上がらないと年収も上がりませんので、待遇面での不満と会社に残り続けることの不安から転職を模索する人が増加しています。
経理部門では、マネジメントポジションの数が限られており、椅子の数が少ないことから、現在勤務する会社の部長が40代や50代前半などの若いケースでは現職での出世は見込めないと判断するケースが多くなっています。
実力主義の考え方が広まってはいますが、成績が明確に出やすい営業部門と異なり、経理部門では昇進が難しいこともあります。ポジティブな要素からの役職者の入れ替わりというのはそれほど多くありません。
そのため、スキル・経験を持った経理人材が不足している中小企業やベンチャー企業へと転職し、ポジションを獲得していく流れが加速しました。
我慢して待ち続けていても、望むポジションに就けないケースが増えているのが現状です。
チャレンジしないことのリスク
大手企業で経理を担当している方の中には、細分化された特定の業務だけを行っていることに対する物足りなさと不安を感じているケースも少なくありません。
特に、今後役職に就く30代の経理の管理職候補の方々は、「ルーティン化された業務に取り組んでいるだけでは未来がないのではないか?」と感じることも多いようで、リスクヘッジの観点からキャリアや業務の幅を広げるために転職を模索するケースも出てきています。
作業をこなすポジションではなく、経験とスキルをもとに意思決定を行うポジションに就くなど、早いうちに上流工程の業務を経験しておきたいと考える方も増えています。
ポジションに空きが出ても外部から人を引っ張ってくる傾向も
例えば、現在の経理部長が定年退職をしてポジションが空いても、社内からの昇格ではなく、外部からスキルの高い人材を招いて配置することがあります。
IT/デジタル化などのテクノロジーの発展を代表例に、社会の構造が大きく変化している世の中においては経営環境も複雑に変化してきています。
そうした中で、経理部門に求められる役割や課題も変わる傾向にあり、社内の人間よりも多くの経験を積んだ人材を招いた方が良いという判断を上層部がすることもあります。
こうしたケースも増えており、1社で我慢して長く勤め続けるという発想よりは、経験値・スキルを高めていきたいと考えるに至るきっかけとなることもあります。
経理管理職クラスの悩みを解決する転職先の1つがベンチャー企業
経理管理職クラスの方々の転職が増加している背景を説明しましたが、彼らの悩みが解消できる転職先の1つがベンチャー企業です。
ベンチャー企業であれば上位のポジションがつかみやすい
ベンチャー企業では経理部門を立ち上げていくにあたり、業務フローの構築を含めたルール作りをしていく必要があります。また、上場を目指しているケースでは、それらが上場企業水準であることが求められますので、経験値が高く、能力のある人材が必要です。
そのため、実務経験の高い経理人材を役職者(部長やマネジャー)として採用する動きが多くなっており、ポジションを求める管理職クラスの方々とマッチするケースが増えています。
管理職としての経験がない方でも、何かしらのプロジェクトを推進した経験などがあれば管理職としての待遇で転職できる求人先も多いことから、チャンスは多く広がっていると言えます。
上場企業での豊富な実務経験を持つ方であれば、上場企業の経理部門としてのあるべき姿のイメージ像が既に持てているため、上場企業基準に達するにはどうしていけばいいのかの道筋を立てることができる可能性が高いことから、需要があります。
また、上場を見据えているベンチャー企業では資金調達が順調なところも多いため、年収を含めた待遇面も大手企業と比較しても見劣りしないケースも増えています。
やる気があれば上を目指しやすい環境であり、上位のポジションを獲得していきたい経理職が希望を叶えやすいフィールドとなっています。
裁量が大きいため、スキルアップの機会も多い
ベンチャー企業は業務の幅が広く、経験しようと思えばさまざまなことにチャレンジできます。
経理としての実務はもちろんですが、その他の管理部門と連携した動きや、経営陣と仕事をする機会も増えます。
そうしたことから、経理からステップアップして経営企画や管理部門統括などの経営に近いポジションへと移行される方もいらっしゃいます。
縦割りの大手企業では難しいことも、ベンチャー企業ならできる場合があります。
自分の意思でステップアップを目指したい方にはベンチャー企業はマッチしやすい傾向にあります。
その先のキャリアに広がりも
管理職として部下をマネジメントしながら部門を作り上げていく経験はそうできるものではありません。
何も土台がないところから試行錯誤して組織を作り上げていく過程や上場企業レベルの業務フローを構築していく過程は多くの企業で必要とされる経験値です。
また、上場を果たした企業でマネジメント職として働いていたという事実そのものが、その先のキャリアにおいてもプラスに働きます。
プレイヤーとしての働きと管理職としての働きどちらも経験でき、転職市場における価値の高い人材となることができることから、キャリアの幅が広がると言えるでしょう。
求められる役割
上記で記載した事項と重なるところも一部ありますが、求められるものとしては「実務遂行能力」と「マネジメント力」の2つが主なものです。
プレイヤーとして手が動かすことも求められる
課長や部長クラスでの採用であっても、実際に手を動かして実務を行うことが期待されるケースが大半です。
多くのベンチャー企業が抱える悩みは、会社の成長速度や変化に対して人員体制が追い付かないことが挙げられ、人手不足になりがちです。そこに加えて、上場企業水準のアウトプットが求められてくるわけですから一人でも手を動かす人間は多く必要です。
そのため、プレイングマネジャーのような立ち位置で業務をこなすケースが多くなっています。
これをメリットと感じるかデメリットと感じるかは人によるところがあります。
経理職の場合は実務をやりたいという方も多いので、役職に就いても自分で手を動かしたいという志向性の方には合うでしょう。
逆にマネジメントに専念したいという場合、ベンチャー企業はマッチしないケースが多くなっています。こうした方は、グロース市場などへ上場している上場ベンチャーを狙っていくなど、少し領域を広げて求人を探していく必要があるでしょう。
メンバーの管理から人事評価、教育などのマネジメントが求められる
マネジメントに関しては、企業によって求められる範囲に大きく差があるのですが、一般的にはメンバーの業務管理から教育までを担当してほしいというケースが多いです。そこに加えて、人事評価の経験まであると良いでしょう。
ベンチャー企業では、やる気がある若手が入社しても、自身の評価が明確でないということで離職に至るケースが多くなっています。人事制度が課題にあがることは少なくありませんので、そこまで含めた管理業務ができれば、なお良いと考えられます。
ただ、管理職として豊富な経験を持つ方は少ないので、転職時点では何かしらのマネジメントした経験があれば問題ないケースが多くなっております。また、ベンチャー企業のマネジメントは大規模な組織とは異なり、どちらかというと実務スキルの有無の方が重要な場合が多くなっています。
転職先企業のフェーズや状況にもよるところはありますが、実務能力が高ければチャンスは多いと言えるでしょう。
気を付けるべき点も
ベンチャー企業への転職は注意しなければならないこともあります。
経営陣との相性や価値観の重要性
経理というポジションの特性と管理職レベルでの転職であることを踏まえると、経営陣との距離が近く、関わる機会も多いため、事前に経営者の価値観などをしっかりとチェックしておくべきだと言えるでしょう。
経営者の考え方や価値観に共感できない場合、一緒に仕事をしていても苦痛に感じられることが多くなってくる可能性があります。そのため、必ずカジュアル面談など、リラックスした雰囲気でざっくばらんに経営者と話せる機会を作ってもらうべきだと言えます。
少し合わなさそうだなと思うところがあれば、慎重になった方が良い場合も多いことから、必ず経営者とは一度会うようにしてください。
なお、当社ではベンチャー企業向けにIPO支援サービスを提供しており、経営者も含めて多くの情報の提供が可能な求人も多くあります。
情報収集をしっかり行って転職をしたい方はぜひBridge Agentにご相談ください。
会社・事業の成長性の見極め
経営者を見極めていくと同時に、会社の将来性もしっかりと見極める必要があります。
IPOを目指すベンチャー企業はたくさんありますが、多くの企業が上場できずにいるのが現実です。そのため、企業を見る目というのも重要となってきます。
確実に見極めるのは難しいのですが、当社では、IPO確度の高い企業や将来性が高いと考えられる企業を案内することが可能です。また、求人の見極めのポイントなどのアドバイスも可能となっておりますので、お気軽に無料相談にお申込みいただければと思います。
忙しい可能性に注意
「ベンチャー企業の経理は激務だから転職はやめておいた方がいい」というアドバイスをもらうことも多いかと思います。
先述したとおり、大手企業と比較すると人員体制は整っておらず、一定の忙しさや大変さは間違いなくあるでしょう。しかし、その度合いは企業によるところがあります。
場合によっては在宅ワークやフレックスなどの仕組みを取り入れていて、柔軟で働きやすい環境ができている企業もありますので、一概に激務でブラックであるとは言えません。
企業の選び方次第という側面が強くなっていることから、心配がある方はBridge Agentのコンサルタントに一度ご相談いただければと思います。
なお、IPOを目指すベンチャー企業の経理の忙しさについては以下の記事で解説していますので、興味のある方はご覧ください。
経理管理職でキャリアや転職先選びで迷うならご相談ください
本ページでは、経理管理職の方の転職相談が増えた背景を解説するとともに、1つの選択肢としてベンチャー企業があることを提案させていただきました。
ただ、あくまで選択肢の1つにすぎません。
ご志向や個別に抱えるお悩みなど、個々人の状況によりベストな選択は変わってくるかと思いますので、まずはご相談いただけましたら幸いです。
転職をお考えの方だけでなく、まずは情報収集や相談がしたいといった方も気軽にご相談ください。
経理のキャリアに精通したコンサルタントがしっかりと対応させていただきます。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。