30代はライフステージの変化がありつつ、キャリアの大まかな方向性を決めなければならない重要な期間です。キャリアアップのためにUSCPA(米国公認会計士)を取得し、転職を検討している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、30代でUSCPAを取得した際の年収目安や転職先、キャリアパスを解説します。転職を考えている場合は、ハイクラス人材の転職支援に特化しているBridge Agentまでお気軽にご相談ください。
目次
USCPA(米国公認会計士)とは
USCPA(米国公認会計士)とは、アメリカ各州によって認定される会計士資格です。国際的に高い評価を受ける公認会計士資格であり、海外受験が可能なため、日本でも受験できます。
受験資格は大きく分けて「学位要件」と「単位要件」の2つで、州ごとに異なるのが特徴です。
試験科目に関しては、2024年1月以降に新制度が創設されました。
- 必須科目:「CORE FAR(財務会計)」「CORE REG(諸法規・税法)」「CORE AUD(監査および諸手続き)」の3科目
- 選択科目:「BAR(ビジネス分析と報告)」「ISC(情報システムとコントロール)」「TCP(税務コンプライアンスとプランニング)」から1つ選択
この試験は絶対評価方式で、99点満点中75点以上で合格となります。各科目の平均合格率(2023年)は、全世界で約51%です。日本在住者の場合、合格率は全世界よりも少し下がり、各科目の平均合格率は約41%(2019年)という結果になっています。
出典:AICPA「Learn more about CPA Exam scoring and pass rates」
なお単純な比較は難しいかもしれませんが、日本の公認会計士試験の最終合格率(願書提出者のうちの合格者の割合)は7.6%という結果です(令和5年試験)。
出典:金融庁「令和5年公認会計士試験の合格発表の概要について」
30代でUSCPAを取得していると転職市場で評価される?
30代でUSCPAを取得していると、会計分野の知識と英語力をアピールできます。業務未経験者でも評価されるきっかけになるなど、転職市場でも価値の高い資格と言えるでしょう。
たとえばUSCPAを取得し、業務未経験から監査法人に転職するようなケースもあります。監査法人で経験を積めば、キャリアパスがより幅広くなります。
ただし、USCPAを取得しても、30代前半と30代後半で、評価のされ方が変わる可能性があることに注意してください。30代前半であれば、USCPAを持っていることそのものが評価されやすくなり、ポテンシャル採用のチャンスもあります。一方で30代後半になると、USCPAを持っていることに加えて、関連する実務経験が求められるのが一般的です。
30代でUSCPAを取得した際の年収目安
30代でUSCPAを取得した場合、それまでのキャリアや転職先によって年収が異なります。
監査法人に転職し、スタッフの役職として働く場合は、年収400〜600万円程度(+残業代)が相場です。シニアスタッフ、マネジャー、シニアマネジャー、パートナーと昇格しますが、マネジャーあたりになると年収1,000万円が見えてきます。
コンサルティングファームに転職する場合は、年収500〜800万円程度が相場です。こちらも監査法人と同様、シニアアソシエイトやマネジャーあたりで年収1,000万円の大台が見えます。
事業会社の経理部門に転職する場合は、年収500〜800万円程度が相場です。大手上場企業に転職するのか、スタートアップ・ベンチャーに転職するのかによっても待遇が若干異なります。
30代でUSCPAを取得した際の転職先
30代でUSCPAを取得した際の転職先は、以下の6つです。
- 監査法人
- 事業会社
- 税理士法人・会計事務所
- コンサルティングファーム
- コンサルティングファーム(FAS)
- 金融機関
それぞれの転職先を解説します。
監査法人
Big4をはじめとして、大手監査法人の監査業務やアドバイザリー業務で、USCPAの知識を生かせます。特に監査部門の場合、USCPAの資格取得者であれば、ポテンシャル採用で転職できる可能性もあります。
監査の経験は転職市場でも高く評価されるため、いったん監査法人に就職して、スキルアップをしながら次のキャリアを考える人も多いです。30代でUSCPAを取得したら、まず検討したい選択肢でしょう。
事業会社
もちろん、外資系企業でも転職時や昇進時にUSCPAは高く評価されます。特に外資系企業では、同僚や上司・部下に外国人が多くいるケースも珍しくないため、USCPAの知識は日常のコミュニケーションでも役立つでしょう。
また、スタートアップ・ベンチャー企業に就職して、CFOを目指すというプランもあります。CFOとしての転職について詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
税理士法人・会計事務所
税理士法人や会計事務所には、外資系企業をクライアントに持っているところもあるため、USCPAが評価される可能性があります。ただし、事務所によっては国内案件を中心に扱っているところもあり、事務所によって差が大きいため、情報収集の徹底が欠かせません。
国際税務部門や国際事業部門など、クロスボーダー案件に関連するような部門があれば、候補として検討できます。
コンサルティングファーム
大手や中堅のコンサルティングファームでも、クロスボーダー案件を扱っているところがあり、USCPAを持っていると評価されやすくなります。事業再生系コンサルティングファームであれば、海外事業に関わるプロジェクトでUSCPAが役立つでしょう。
ただし、コンサルティングファームへの転職は、USCPAを持っているだけでは難しい場合もあります。コミュニケーションスキルなど、コンサルタントとして求められる能力も重要ですので、自己分析が必要です。
公認会計士がコンサルティング業界へ転職する際のメリット・デメリットについて詳しくは、以下の記事も参考にしてください。
コンサルティングファーム(FAS)
FASは、「Financial Advisory Service」の略で、M&Aや財務業務に関連したサービスを提供しています。
FASは大きく分けて、監査法人によって設立された関連会社(Big4系)、もしくは独立した少数精鋭のブティック型の2種類です。いずれも、USCPAで培った知識を生かせる可能性があります。
「ブティック型の方が少数精鋭で専門性が高い」など、両者の違いをよく理解して、転職先の候補を検討することが重要です。
公認会計士がFASへ転職する際詳細については、以下の記事も参考にしてください。
金融機関
USCPAを活かして金融機関での転職を考える場合、投資銀行がおすすめです。特に外資系投資銀行では、クロスボーダー案件や海外関連事業に関する知識と英語力を活かすことができる環境があります。
年収の項目では紹介しませんでしたが、外資系投資銀行は基本的に高年収が期待できます。ただしハードワークになりがちなので、ワークライフバランスを重視する方には向いていないかもしれません。
30代でUSCPAを取得した際のキャリアパス
30代でUSCPAを取得した場合、監査の経験を積むためには監査法人を中心に転職先を絞るのが良いでしょう。監査法人での経験は、将来のキャリア選択肢を広げる上で有利です。
一方、PEファンドを目指す場合は、外資系投資銀行や戦略コンサルティングファーム、事業再生コンサルティングファームなどで経験を積むことが一般的です。
ワークライフバランスを重視する場合は、福利厚生が整っている大手上場企業などが候補になるでしょう。
USCPA取得後のキャリアは多様であり、あらかじめ自分のキャリアや転職の軸を決めておくことをおすすめします。自分のキャリアゴールやライフスタイルに合った選択肢を見極めるために、情報収集や自己分析をしっかり行いましょう。
30代でUSCPAを取得したら海外で就職できる?
USCPAを取得した場合、30代でも海外での就職は十分可能です。USCPAは国際的に認知されている資格であり、ビジネスがグローバル化している現在では、多くの国で高く評価されています。
特にオーストラリアやカナダなど、USCPAと相互認証契約を締結している国々では、特定の要件を満たせば現地の会計士として活動することができます。
ただし、海外での就職を目指す場合は、現地の要件やニーズを把握し、適切な準備を行うことが大切です。そのためには、言語や文化に関する学習や現地でのネットワーキング、求人情報の収集などが役立ちます。
30代でUSCPAを取得した方々向けのアドバイス
30代でUSCPAを取得していると、会計分野の知識や英語力をアピールできるため、キャリアアップにつながります。監査法人や事業会社、税理士法人・会計事務所、コンサルティングファームなどさまざまな選択肢がありますので、転職の軸を定めておくと良いでしょう。
USCPAを取得し、転職を検討している場合は、転職エージェントを活用することをおすすめします。非公開求人を紹介してもらえるだけでなく、キャリア相談など転職に関するさまざまなサポートを受けられます。
Bridge Agentは、ハイクラスの管理部門・士業に特化した転職エージェントサービスです。専門のコンサルタントによるキャリア相談も実施していますので、転職を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。