自身のこれまでのキャリアを振り返り、新たな挑戦としてのCFOへの転職を考えている方もいるかもしれません。スタートアップのCFOは、大手上場企業とは異なり、特有の面白さや苦労があります。
本記事では、スタートアップのCFOに転職するメリット・デメリットやキャリアパス、求められるスキル・経験、転職活動時のポイントなどを詳しく解説します。
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目次
スタートアップのCFOに転職した際の仕事内容
スタートアップのCFOに転職した際の主な仕事内容は、以下の4つです。
- 資金調達
- IPO(上場)準備
- 財務戦略・経営戦略の策定
- その他の業務
それぞれの仕事内容を解説します。
資金調達
スタートアップCFOの重要な仕事の1つが資金調達です。
CFOは「最高財務責任者」であり、企業の財務の中核を担います。資金調達はその責任の一環です。資金調達といえば、まず銀行からの融資が思い浮かぶかもしれませんが、実際には補助金の活用やVC(ベンチャーキャピタル)など、さまざまな手段があります。どこから資金調達するかを戦略的に考える役割が求められます。
CFOには「攻め」と「守り」の業務があり、上記の資金調達は「攻め」の業務と呼ばれています。特にコンサルティングファーム出身者や投資銀行出身者など、ファイナンス関連のスキルに自信を持っている方が強みを発揮しやすい分野です。
IPO(上場)準備
スタートアップの一部は、企業規模が大きくなってくると、IPO(上場)を検討するようになります。
IPO準備も、スタートアップのCFOに転職した際の主な仕事です。IPOとは、企業が初めて株式を一般公開することを指します。公開市場で株式を取引できるようになると、資金調達がしやすくなります。
CFOは、IPO準備において、社内体制の整備や、市場関係者や投資家をはじめとしたステークホルダーへの説明など、さまざまな業務の責任を負います。
財務戦略・経営戦略の策定
財務戦略・経営戦略の策定も、スタートアップのCFOに転職した際の仕事です。
経営目標を達成するための財務戦略の立案や、経理に関するフローの構築など、財務や経理に関する幅広い業務の責任を負います。たとえば「コスト管理」です。自社の収入と支出の流れをみて、キャッシュフローに問題はないかどうかをチェックし、必要に応じて改善策を考えます。
経営戦略の策定では、企業の長期的なビジョンと、それを達成するための戦略的目標を定義します。CFOは「経営者の右腕」とも呼べる存在であり、全体的な視点で物事を考える姿勢が大切です。
その他の業務
スタートアップはリソース不足になることが多く、CFOが本来の業務よりも広い範囲を担当するケースも珍しくありません。人事・労務管理や運営管理、コンプライアンスなどのリスク管理といった、財務以外の管理業務も任されることが考えられます。
財務データに基づく市場分析を通じて、マーケティング戦略の策定を支援するなど、営業・マーケティング分野での仕事を担当する可能性もあります。スタートアップにおけるCFOとCEOは、こうした「何でも屋」としてのポジションになることも珍しくないため、両者が協力して進めていくことも求められます。
「CFOになるにはどのようなスキル・経験が必要か」「どのようなキャリアパスを描くべきか」については、以下の記事で解説しています。
スタートアップのCFOに転職するメリット
スタートアップのCFOに転職するメリットは、以下の3点です。
- その後のキャリアで有利になる
- 年収が上がる
- やりがいのある仕事ができる
それぞれのメリットを解説します。
その後のキャリアで有利になる
スタートアップのCFOに転職するメリットは、その後のキャリアで有利になることです。たとえばCFOとしてIPO準備などに関わった経験は、将来的に多様なビジネス環境で活躍するための貴重なスキルセットになります。
限られたリソースの中で最大の成果を出すための戦略的思考能力や問題解決能力は、どの組織でも重宝されるでしょう。同様にスタートアップのCFOだけではなく、大手企業の財務部長など、キャリアの選択肢が広がります。
年収が上がる
年収が上がるのも、スタートアップのCFOに転職するメリットです。前職の仕事内容や責任によるため、必ずしも年収アップが実現できるとは限りませんが、スタートアップでも基本的には高年収が期待できます。
IPO準備企業の場合は、自身がCFOとしてIPOに導き、上場後にストックオプションを行使することでキャピタルゲインを得る機会もあります。企業規模や成長段階、業界、地域などによって年収は異なりますが、一般的な目安としては1,000万〜1,500万円程度です。
やりがいのある仕事ができる
やりがいのある仕事ができるのも、スタートアップのCFOに転職するメリットです。たとえばIPOは、財務戦略・経営戦略の策定から投資家との交渉、公開に至るまでの一連のプロセスでさまざまな困難を伴うでしょう。スタートアップのIPOは、一般的にハードルが高く、失敗してしまうケースもよく見られます。
「準備に時間がかかり手続きも煩雑な中、どのようにしてIPOを達成するかを考える」という、唯一無二の面白さがCFOにはあります。さまざまな困難を乗りこえてIPOを実現した際の達成感は格別でしょう。
スタートアップのCFOに転職するデメリット
スタートアップのCFOに転職するメリットと比較する形で、デメリットを考えてみると、以下の3点が主に考えられます。
- 組織の安定性に欠けている
- リソース不足の可能性がある
- 激務になりやすい
それぞれのデメリットを解説します。
組織の安定性に欠けている
スタートアップのCFOに転職するデメリットとしてまず注意したいのは、組織の安定性に欠けていることです。スタートアップは基本的にキャッシュフローが安定していないため、ささいな原因で組織全体の方向性が変わることがあります。
たとえば、「年収1,500万円」と掲示されて転職したにもかかわらず、突然の資金繰りの悪化で、当初伝えられていた待遇から変わってしまうケースも珍しくありません。さらにはIPO準備をするために転職しても、業績悪化によってIPOに関する計画が頓挫する可能性も考えられます。
リソース不足の可能性がある
スタートアップのCFOに転職するデメリットとして、「リソース不足の可能性」も理解しましょう。スタートアップが創業してから安定するまでの成長ステージとして知られているのが、「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」の4つです。
特にシード期やアーリー期は、チームを構築して資金調達などをする段階であり、リソース不足になるケースがほとんどです。「スタートアップのCFOに転職した際の仕事内容」でも触れたように、CFOとして転職したにも関わらず、財務以外の領域を任される可能性もあります。
激務になりやすい
激務になりやすいのも、スタートアップのCFOに転職するデメリットです。前述のようにリソースが限られている点や、組織が成長・変化の速いフェーズにあること、幅広い業務を任されるのが主な理由です。どのような企業のCFOに転職するにせよ、基本的には精神的・体力的なタフさは必須と考えておきましょう。
残業時間も多く、時期によってはプライベートの時間をほとんど確保できない可能性もあります。もちろんCFOを目指している方は最初からあまり期待していないかもしれませんが、もしもワークライフバランスを優先したい場合は、転職先の見直しを検討するべきです。
公認会計士の方がIPO準備企業で活躍できるポジション・役割について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。CFO以外のポジション・役割をご紹介しています。
スタートアップのCFOに転職する際のステップ
スタートアップのCFOに転職する際のステップは、一般的には以下の通りです。
- 書類選考
- カジュアル面談
- CEOや役員クラス、執行役員による面接
- 適性検査・レファレンスチェック
- 採用
それぞれのステップで、具体的に何を行うかを解説します。
書類選考
一般的な転職活動同様に、スタートアップのCFOに転職する際の最初のステップは書類選考です。スタートアップの場合、大手上場企業よりも選考に関する自由度が高く、一般的な役職の選考とは異なるフローになっている場合もあります。
ただし、転職によってCFO(もしくはCFO候補)のポジションに応募した場合は職務経歴などを確認するため、基本的には書類選考から始まります。書類を確認し、採用担当者が「一度会ってみたい」と判断した場合、カジュアルな面談やフォーマルな場での面接に続くケースが多い傾向です。
カジュアル面談
書類選考後は、カジュアル面談もしくはフォーマルな場での面接になるのが一般的です。
カジュアル面談は、「まずは候補者と直接会って話してみたいけど、本格的な面接の雰囲気になるのは避けたい」と採用側が判断し、軽く話をする際に選ばれます。通常の面接の雰囲気とは異なり、雑談などを交えながら、お互いのニーズのすりあわせを行うのが基本的な流れとなっています。主な目的は、文化や価値観の適合性を探ることです。
そこまで志望度が高くない企業の場合、スケジュールなどの関係で面談をキャンセルしたくなる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、優先度が低い応募先であっても、カジュアル面談をきっかけに関心を持つこともあるため、打診があれば積極的に応じるのがおすすめです。
CEOや役員クラス、執行役員による面接
カジュアルな面談を終え、本格的な面談へと進む場合、最初からCEOや執行役員、CFOと同じ役員クラスによる面接が実施されるケースが多いようです。
なぜなら、CFOの面接となると、通常の人事担当者や管理職クラスでは評価が難しいためです。書類選考が終わった後、カジュアル面談を経ずに、CEOや執行役員やCFOと同じ役員クラスによる面接が実施されるケースもあります。
CEOによる面接だけでなく、他の責任者とも会って話をし、全員の合意を得た上で採用とするケースもあります。このあたりの選考フローは応募先によって異なるため、転職エージェントを活用する場合は、事前に情報をチェックしましょう。
適性検査やレファレンスチェック
スタートアップのCFOとして転職する際、適性検査とレファレンスチェックが行われる場合もあります。適性検査は、候補者の能力や性格、行動特性などを評価するために実施されるものです。
レファレンスチェックは、「経歴照会」や「背景調査」とも呼ばれ、書類や面接での振る舞いからはわからない部分を確認する行為です。
一緒に仕事をした関係者などにヒアリングを行い、細かい職務遂行能力や人間関係の構築能力など、さまざまな要素をチェックします。ハイクラス人材ほど重視される傾向が見られ、近年では採用フローにおけるの新しいスタンダードになりつつあります。
採用
書類選考や面接・面談、適性検査・レファレンスチェックなどの厳正な選考を経て、基準を満たせば、晴れてCFO(もしくはCFO候補)として採用されます。しかしスタートアップには、「採用を考えてはいるが、現時点でCFOとしての素質が判断できず、しばらく様子見をしたい」と考えるところもあります。
このあたりはケースバイケースであり、「最初の数カ月間は業務委託で、一定の基準を満たせば本採用」といった方法を使うところなど、独特な採用方法をする企業も珍しくありません。
スタートアップのCFOへ転職した際のキャリアパス
スタートアップのCFOへ転職後、IPOを達成したら、基本的には以下の2つのキャリアパスに分かれます。
• そのままCFOもしくは他の責任者として企業に残る
• 転職する
CFOとして別の企業に転職する場合は、上場後数年以内に転職する人方が多く見らみられます。さらには上場企業ではなく、再び未上場の企業にCFOとして転職する方が多い印象です。IPO準備に関する経験を生かしやすいこともあり、基本的には同業種を選ぶ傾向にあります。
また、CFOとしての転職だけでなく、経理・経営企画のマネジャーや監査法人のアドバイザリー部門、M&Aコンサルタント・IPOコンサルタントなど、さまざまなキャリアパスが考えられます。
スタートアップのCFOへの転職で求められるスキル・経験
スタートアップのCFOへの転職で求められるスキル・経験は、以下の3つです。
- 財務に関する専門知識
- コミュニケーションスキル
- マネジメント経験
それぞれのスキル・経験を解説します。
財務に関する専門知識
スタートアップのCFOへ転職する場合、財務のエキスパートとして、財務に関する専門知識は欠かせません。キャッシュフローの管理や財務諸表作成などの業務をするためには、財務・会計の知識が必須です。
公認会計士として監査法人で働いた経験がある方や、FAS(Financial Advisory Services)業務を行っているBIG4系の会計事務所での経験がある方でであれば、基本的には問題ありません。
コミュニケーションスキル
スタートアップのCFOへ転職する際は、コミュニケーションスキルも必須です。CFOは組織内のさまざまな職位の人々と関わるだけでなく、投資家をはじめとしたステークホルダーともコミュニケーションを交わします。
資金調達の際は交渉力が求められるため、単なるコミュニケーションではなく「相手を納得させる話し方」が必要です。グローバル展開を視野に入れている、すでに展開している場合は、英語でのコミュニケーション能力も求められます。
マネジメント経験
未経験からスタートアップのCFOに転職する場合は、マネジメント経験をアピールするとよいでしょう。たとえば、監査法人のマネジャーとして人事・労務管理に関わった経験などは、アピールポイントになります。
公認会計士としての理論的な部分とマネジメント経験という実践的な部分を合わせて、ポテンシャルを見込んでもらえると、評価してもらえる確率も高まるでしょう。
未経験でもスタートアップのCFOへ転職できる?
結論から言えば、未経験でもスタートアップのCFOへの転職は可能です。一般的にはCFO経験者の方が有利であり、前述のように、上場後に再び未上場の企業へCFOとして転職するケースがよく見られます。
ただし、スタートアップの場合は、ポテンシャルを重視して採用する傾向にあるため、未経験でも十分チャンスがあります。たとえば、公認会計士資格保有者や投資銀行出身者、コンサルティング会社出身者、事業会社(財務・経理・経営企画)出身者などです。
いずれにせよ、財務・会計などの理論的な部分と、関連する実務経験など実践的な部分を両立させるのが重要です。
スタートアップのCFOへ転職する際のポイント
スタートアップのCFOへ転職する際のポイントとして、以下の3点を意識してください。
- 転職難易度はかなり高いと認識しておく
- 候補となる企業の情報収集を徹底する
- 転職エージェントを活用する
それぞれのポイントを解説します。
転職難易度はかなり高いと認識しておく
経験の有無に関わらず、スタートアップのCFOへの転職は、一般的な転職と比べてかなりハードルが高いことを認識してきましょう。財務・会計に関する専門知識はもちろん、経営者の視点で物事を考える能力、身近なニュースやトレンドに関する深い知識が必要です。
CFOポジションを目指す方が、「そもそも書類選考を突破できず、なかなか面接に進むことができない」というケースも珍しくありません。このような場合、自分1人の力で解決しようとするのではなく、転職エージェントなど、第三者の支援を受けながら転職活動を進めていきましょう。
候補となる企業の情報収集を徹底する
転職の事前準備と言えば、「自己分析」をイメージする方もいらっしゃるかと思います。しかし、スタートアップのCFOへの転職では、候補となる企業の情報収集を徹底するのも忘れてはいけないポイントです。情報収集は、ミスマッチを事前に防止するためにも入念に行いましょう。
スタートアップの場合、企業によってカルチャーが大きく異なるため、ビジョン・ミッション・バリューなどを正しく理解する必要があります。他にもCEOや役員クラスの人柄や志向性、一緒に働くメンバー、部下となる従業員の人数など、人に関する情報もなるべく把握しておくとすり合わせがスムーズに行えます。
転職エージェントを活用する
スタートアップのCFOへ転職を考える際、企業の社員からの紹介されるリファラル採用以外でCFOの求人を探す場合は、転職エージェントを活用することをおすすめします。求人が公開されていないケースも多いため、転職エージェントを通じて独自の求人情報を得ることができる可能性があります。そのため、基本的には転職エージェントを使わない手はありません。
面接対策や転職先の候補となる企業の選定や情報収集など、さまざまなサポートを受けることができます。応募時点でのミスマッチはスタートアップ企業に強い転職エージェントを活用することで防ぐことができます。
スタートアップのCFOの求人情報はBridge Agentまで
スタートアップのCFOは、大手上場企業とは異なり、組織の不安定性や業務の幅広さなどさまざまな苦労が想定されます。しかし、多くの困難を乗りこえてIPOを達成するやりがいはやはり格別で、上場後に再び未上場企業のCFOに転職するケースも珍しくありません。
また、未経験でも転職は可能です。財務・会計に関する知識や、関連する実務経験があれば、転職を検討しましょう。転職エージェントを活用すると、非公開求人の紹介やキャリア相談など、さまざまなサポートを受けられます。
弊社ではスタートアップ企業への経営管理に関するコンサルティングやIPO支援サービスを提供しており、スタートアップ企業のCFOに関する求人情報を豊富に扱っています。転職を検討している場合は、Bridge Agentまでお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
ブリッジコンサルティンググループ株式会社
執行役員/ヒューマンリソースマネジメント事業部 事業部長 仁木 正太
新卒から15年間、九州屈指の地方銀行で法人向けに、融資新規開拓から深耕営業を中心に従事。その後、急成長ベンチャーにて大手、上場企業の事業部長、役員経験者を対象とした“エグゼクティブ人材”と企業オーナーとのマッチング支援サービスに従事し、海外現地法人社長、子会社社長、ベンチャー企業の取締役CxOなどへの移籍を約50名手掛ける。2020年、ブリッジコンサルティンググループで人材紹介サービス「Bridge Agent」を立ち上げる。パーソルキャリア運営ハイクラス転職サービス『iX転職』にて、2021年に最も活躍したヘッドハンターを表彰する『iX HEADHUNTER AWARD 2021』ハイクラス転職人数部門1位(2,500名中)を受賞。